遠くで放射能について騒ぐより、現場で力を尽くしている人の声に耳を傾けて欲しい。『復興は教育からはじまる』

最近また福島での「鼻血」がネットで話題のキーワードになっています。

私のツイッターフォロワーには冷静に情報を分析する人が多いのですが、感情的で煽情的なツイートも目につきます。

原子力発電を含むエネルギー問題は、「地球の温暖化による環境破壊をどうするのか?」という大きな課題もあり、私自身は、この分野について学べば学ぶほど、「●●をすればいい。簡単だ!」という極論を言うことはできないと強く感じるようになっています。私の「信念」は長年の間に何度も移り変わりましたから、いろいろな「信念」を持っている人を頭ごなしに否定することはできないと思っています。ですから、私とは異なる考え方をする人のツイートも読みますし、それだけでフォローを外したりはしません(他人の人格を攻撃したり、非論理的な思考を押し付ける人は別)。

ただし、地震と原子力発電所からの放射線被害を受けた地域から遠く離れた場所で、あたかも自分が正義の味方のように騒いでいる方々にはウンザリするだけでなく、憤りを覚えます。

その人たちの「正義の叫び」が、毎日現場で頑張っている人たちを傷つけ、復興の邪魔をしていることを、知ってほしいと心から思うのです。

2012年、私は縁があって福島県の南相馬市を訪問しました

地震、津波、放射線被害とすべての災害を被り、子どもたちが暮らす場所も学校の校舎も「仮設」のままという場所です。

そこで会った方々の献身的な努力に、私は何度も心を動かされました。彼らの声をしっかりと届ける方法を見つけられないでいたのですが、南相馬市に連れて行ってくれた友人の星槎大学教授の細田満和子さんと共著者の上昌広さんが『復興は教育からはじまる』という本にまとめてくださいました(目次はこちらで読めます)。

 

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アメリカのパブリックヘルスを知ることで日本の医療を見つめ直す

パブリックヘルス 市民が変える医療社会―アメリカ医療改革の現場から―
』という本のまえがきで、著者の細田満和子さんは、ハーバード公衆衛生大学院に留学した日本人の「公衆衛生という観点からは、アメリカから学ぶものがあるのか、正直いってわからない」という発言を紹介されておられます。

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たしかに日本の平均余命は世界でもトップですし、乳児死亡率は最低です。そして、国民会保険でもありますから、人口の約30%が無保険のアメリカ合衆国は「公衆衛生」という点では遥かに後進国に見えます。けれども、細田さんは、日本がアメリカのパブリックヘルスから学ぶことはあると言うのです。

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アトピー性皮膚炎対策を簡単でわかりやすくまとめた本

私も娘もアトピー体質なので、アトピーについては治療も受けているし、本も読んでいるし、民間療法(怪しいのじゃなくて、薬草皮膚クリームです)もやってきました。

体験からようやくたどり着いた私なりの結論というのがあるのですが、「正しく知ろう 子どものアトピー性皮膚炎」(赤澤 晃 朝日出版社)でそれを裏付けていただいたように思いました。

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日本人の医療依存症をたしなめる本ー治療をためらうあなたは案外正しい

先週マンモグラフィー検診を受けました。私の加入している健康保険では40歳を超えると、毎年無料で乳がんのマンモグラフィー検診を受けることができるのです。

そのマンモグラフィー検診を受けた日、戻ってみると日本から「治療をためらうあなたは案外正しい」という本が届いていました。どうやら以前お世話になった日経BP出版の局の編集委員川口達也さんからのサプライズ・プレゼントのようです。

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表紙には「EBMに学ぶ医者にかかる決断、かからない決断」とあります。EBMはEvidence Based Medicine(エビデンス・ベイスト・メデシン)つまり客観的な観察や統計などの根拠に基づいて患者とともに治療方針を決める医療のことです。EBMそのものは約20年前に提唱され、日本でも医療の教育や臨床の場ではすでに普及しているコンセプトです。日本を離れて15年になるので日本の現状には疎いのですが、一般人にも馴染みある言葉かもしれません。

ご存知の方も多いと思いますが、私は(臨床経験は短いのですが)日本の看護師と助産師の免許を持っており、デンマークの医療品製造業のプロダクトマネジャーを務めたこともあります。この時期に日本で最も優秀な先生方の英語論文抄読会にお誘いいただき(甘えて参加した私は相当恥知らずです)、多くのことを学ばせていただきました。その後医療の分野の翻訳にも携わるようになり、これを通じて最新医療の情報にも触れ続けることができました。

こういう背景のある私ですが、日本でもあまり病院に行かなかったし、米国ではさらに行かなくなりました。病院に行くのは、上記でお話ししたマンモグラフィー検診、インフルエンザの予防注射、子宮がん検診(細胞診)と1年に一度の定期検診くらいです。そもそもEBMが徹底している米国ではささいな理由で医者にかかる人はほとんどいません。予約を取るのが面倒なので、「これは受診が必要な症状かど
うか」とまず自問自答するからでしょう。今振り返ると、日本人ってほんとうに医者好きだなぁと思います。「治療をためらうあなたは案外正しい」の著者であ
る医師、名郷直紀さんが言うところの「重度の医療依存症、病気恐怖症、"健康強迫シンドローム"」にかかっている人は米国に比べてダントツ多いと思います。

「治療をためらうあなたは案外正しい」の著者である医師の名郷直紀先生はこの分野では有名な方のようですね。名郷先生は、日本人が医療機関にかかる代表的な理由(疾患)ごとにEBMに基づいて「治療を受けないほうが案外正しい」かもしれない理由を述べておられます。それらは、ご想像どおり、「高血圧」、「高コレステロール血症」、「がん検診」などです。

私も「治療を受けないほうが正しい」場合は多いと信じている人なので、総合的には名郷先生におおいに賛成です。でも、各論で言うと(正直言って)私とはけっこう意見が異なるみたいです(特にかぜとインフルエンザ。「二次感染を起こしたり、悪化しないかぎりは医療機関には行くべきではない」というのが私の意見)。意見が一致したのは、EBMにもとづいた「がん検診」を受けるというところです。私が乳がんのマンモグラフィー検診をするのは効果があるという根拠があるからです。子宮がん検診の細胞診もまったく無害で効果があるのでします。でも早期発見で生存率が変わらないがんに関しては「知らぬが仏」と思っています。

要は、「医者にかかっても良くならないことのほうが多いし、ありとあらゆる病気を恐れて病院通いするのは時間と人生の無駄。EBMに基づいて受診しよう」ということです。医者にかかる前に「かかるべき症状なのかどうか」をインターネットで調べてみるといいでしょう。なるべく沢山読んで、バランスのとれた意見を参考にすることです。今はけっこう良い情報を得ることができますよ。また、医師が常に正しいとは限らないことも覚えていたほうがいいと思います。大量に押し寄せる患者をさばくだけで精一杯の医師たちがひとりひとりの患者を十分観察することはできません。たった2分で正確な診断を下すのはどんなに名医でも不可能です。それゆえ、外来に押し寄せる「治療の必要がない患者」を減らすのも大切なことなのです。

ともあれ、「点滴サロン」なんて馬鹿げたことが流行る" 病んだ"日本には「そんなことしてると、かえって病気になるぞ!」という脅しが必要かもしれません。