がん治療におけるホリスティックな考え方

最近Twitterで食餌療法のひとつ「マクロバイオティック」や精製していない砂糖を摂取しないことの利などについて軽く語ったところ、どうやら「いかがわしい療法をすすめている」と感じた人がいるようです。そこで、ちょっと私の立場を説明しておこうと思いました。

「水晶玉をつければ病気が直る」とか「宇宙からの光線を受ければ直る」的な療法はもちろんのこと、一見説得力があるものの、かえって害を及ぼす「いかがわしい療法」は大嫌いな人間です。昔、高校時代の友達がそういう「化粧水」や「水晶玉」を(何度もやんわり断ったにも関わらず)奇形児の写真まで送って「こういうものを使わないとこんな結果になる」みたいな勧誘をするので、すっかり縁を切ってしまったこともあります(だいだい私は化粧をしないのです。「化粧をしない」ことについてまで批判されたのは?でしたが)。病気のために精神的に弱くなっている人の心理につけこんで高いものを売りつける人々には憎しみすら覚えます。

けれども、そのいっぽうで、一般の人々がはなから否定しているものの中に、治療を助けたり、健康を推進するものがあるのも事実です。それが、代替補完医療Alternative and Complementary Medicineなのです。この中で得に私が推奨するのは、Complementary MedicineとIntegrated/Integrative Medicineの考え方です。つまり、西洋医学を切り捨ててそれ一本にする療法ではなく、西洋医学の治療ではカバーできないことを補い、患者の健康そのものを推進する療法のことです。

そもそも、現代の薬は自然界の薬草から生まれたもので、その人工的なバージョンです。だから薬草や漢方を否定するのはおかしな話なのです。また、薬を経口するように、口から食べる食事の内容が健康に影響を及ぼすのは非常に論理的なことです。糖尿病や高血圧では食餌療法が非常に重要な役割を果たします。どうしようもない状況を除いて私はマクドナルドのハンバーガーは食べません。無理しているわけではなく、本物の味に慣れてしまっているので、ああいうものを受け付けられないだけなのです。インスタントラーメンはたまに食べますが、必ず後でむくんだりして調子が悪くなります。マクドナルドだけを食べ続けたらどうなるか、というのを身を以て検証したドキュメンタリー「Super Size Me」は極端な例ですが、身体は正直なものなのです。

ただし、痩せるためのダイエット(私はこの種のダイエットはしない主義です)もそうですが、「ほどほど」が大切なのは言うまでもありません。

玄米や近くで摂れる新鮮な野菜(できるかぎり有機)の食品を摂るマクロバイオティックの利は十分承知していますが、それをずっと続けるのは(ダイエットをしない主義の私には)まず無理です。

また、サプリメントの問題点は、薬品ではないために、製品ごとの質の管理ができず、効用を実証しにくいことです。今後この分野の研究がもっと進むことを願っています。

科学的な検証が進んでいるものの中には、私たちの先祖が「知恵」として使ってきた療法が多いのです。医学書院の看護学雑誌などで、科学的な立場から米国の文献を紹介したり、ルポをさせていただきました。もう古いものですが、ご参考までに2003年の看護学雑誌掲載のルポ「米国のがん治療先端医療の場での代替補完医療」第一部をご紹介します(新しいMacを買ったとたんスキャナーが使えなくなったので、pcを使うため時間がかかりすぎるので1部だけ)。

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もっと綺麗なPDFを読みたい方、あるいはこれ以外の掲載に興味ある方は有料ですが医学書院からPDFを読むことができます。

米国のがん治療先端医療の場での代替補完医療(上)

米国のがん治療先端医療の場での代替補完医療と看護師の役割

精神神経免疫学パートI─マインド―ボディ(心と身体の連携)介入方法

精神神経免疫学パートII─生理学─なぜ看護介入は身体機能に影響するのか

終末期ケアについて

高齢者の終末期ケア─死にゆく過程にまつわる思い違いを正す〔上〕

高齢者の終末期ケアー死にゆく過程にまつわる思い違いをただす(下)

オバマ大統領の失脚を狙う共和党のスターはこんな人たち

オバマ大統領へのフラストレーションについて以前に書きましたが、彼の立場を考えるとなんとか頑張って欲しいと応援せずにはいられません。

私が理解できないのは、現在の共和党の徹底的な「何でも反対党」ぶりです。ブッシュ大統領のもとで自分たちが作り上げた負債をオバマ大統領のせいにするだけでなく、ブッシュ大統領のもとで自分たちが賛成していた政策にまでオバマ大統領が取り入れたとたんに反対する理由を見つけるのですから。オバマ大統領の失敗は米国の恐慌を招く可能性が高く、米国の恐慌は世界恐慌を招きかねません。その危機を回避することよりも、小さな政治的勝利(オバマ大統領を失脚させることで、国民の人気を得て、党の当選者を増やす)しか考えていない政治家は政治家の資格がないと思います。

その典型的な共和党のスターは日本でも有名なサラ・ペイリンですが、それ以外にも似たようなスターがいます。共和党の下院議員Michele Bachmann(ミシェル・バックマン)がその一人です。でまかせの嘘で民衆を鼓舞することで有名なのですが、その証拠がオバマ大統領の医療制度改革に反対するこのビデオです(Think Progressより)。

医療改革案のモデルのひとつである日本のシステム(政府が管理するユニバーサルヘルスケアシステム)が恐ろしい理由について、彼女はこんな逸話を披露しています。(忙しいので丁寧な訳でないことを前もってお詫びします)

以下はワシントンDCである(名無しの)日本人男性が彼女に接近したというバックマンの逸話です。

彼(その日本人男性)が言うには「日本のヘルスケアでの受診待ちはもうどうしようもない状態だ。(治療を受けたければ、ウエイティングの)リストに乗って、待って、待って、待たなければならない」ということなのです。けれども、みなが知らないのは次の部分だと彼は言うのです。「日本では、国民はヘルスケアについて意見を述べることをやめてしまった。日本のヘルスケアには問題があるのだけれど、それについて発言することを国民は恐れている」私はそこで「それはなぜですか?」と尋ねました。彼は「なぜなら、(ブラック)リストに載って、ヘルスケアが受けられなくなるからだ。保険に加入できなくなり、受診もできなくなる。だから皆恐れている。政府に対して反論するのを恐れている。どんなことを言うのも恐れている」と。私たちはこういう将来を求めているのでしょうか?

He said that in Japan, to wait and get health care is almost
impossible. You get on a list and you wait and you wait and you wait.
But he said this is something people don’t know: in Japan, people have
stopped voicing their opinion on health care. There are things
that are wrong with Japanese health care, but people are afraid of
voicing. ‘Well why is that,’ I asked. [He said], ‘Because they know
that would get on a list and they wouldn’t get health care
.
They wouldn’t get in. They wouldn’t get seen. And so people are afraid.
They’re afraid to speak back to government. They’re afraid to say
anything.’ Is that what we want for our future? 


もちろんバックマンはこの「日本人男性」に会った証拠はまったく提示していません。彼女はオバマ大統領の国籍への疑いを広めたことでも有名な嘘つきですが、日本をまるで旧ソ連みたいに言うのはさらに許せません(と言ったところで、@kana_chika さんから「ソ連は外国人で保険に入ってなくても手術も入院もタダでした。病院内に会計がないので」というTwitterでの体験談をいただきました。私が「旧ソ連」とたとえに出したのは、「政府に反論するとブラックリストに載る」という部分ですが、それもまあ証拠があるわけではありませんねえ) 。

つまりバックマン下院議員が植え付けようとしているのは、「ユニバーサルヘルスケアは社会主義である。社会主義になると政府に文句を言えなくなり、治療が受けられなくなる」という恐怖なのです。

ところで、米国での予約待ちなんて日本からは想像できませんよ。高いお金を払って保険に入っていても、予約しようとしたら何ヶ月も待たされます。だからわが家では風邪やインフルエンザくらいでは病院には行きません。行くのは定期検診だけで、それも6ヶ月くらい前から予約。最近はドクターではなく予約しやすいナース・プラクティショナー(投薬もできる専門家ナース)にしています。

オバマ大統領が相手にしているのは、同性愛結婚に反対で医療制度改革に反対という「反対」が売り物のバックマンやペイリンをスター扱いしている共和党なんです。どうりで近年多くの共和党員が離れて行ったわけです。こんな共和党に対して一生懸命「一緒に働こう」と親切に働きかけてきたくせに、自分の党である民主党(特にリベラル)のアジェンダを無視してきたからオバマ大統領の人気が最近落ちていたのです。彼のことを「これまで最も左寄りの大統領で、意見をちっとも聞いてもらえない」という共和党の言い分は馬鹿げているにもほどがあります。

けれども最近共和党への厳しい態度を示したオバマ大統領の人気が突然上昇しています。ぜひ、スピーチだけではなく議会を力づくで動かすリーダーシップを示して欲しいものです。

マーティン・ルーサー・キング牧師の偉業を讃える行事のお知らせ

今年もマーティン・ルーサー・キング牧師の偉業を讃える祝日が近づいてきました。

私が住むマサチューセッツ州レキシントン町でも過去17年にわたって記念行事が開催されてきました。私もこの行事には2006年から関わっており、今年で5年目となります。主催は2000年から2年年まで続いたLexington No Place For Hateの実行委員が中心になってできた新しい市民グループLexington CommUNITYです。このいきさつはどっかに書いたのですが、詳細を書くと1日では終わらないだろうという泥沼で、精神的に非常に疲れる出来事でした。そのトラウマにも負けず2年前のMLK Jrイベントを開催したメンバーが中心になってできたのがLexington CommUNITYです。

ブログも新たに作ることになり、言い出しっぺの私が管理人を務めることになりました。Lexington CommUNITYってのです。イベントの詳しい内容は、ぜひこちらでどうぞ。

ピクチャ 5

それはいいんですが、ミッション・ステイトメントを決めるのに数ヶ月、合計うん十時間も使っちゃうという人々が集まっています。ノンプロフィット出身が多いからかもしれません。ディスカッションは面白いのですがコンテントが決まらなくって、ほんま管理人は困り果ててます。だからもう「決まらないのなら勝手に書きますぜ〜。間違ってたら後で文句言ってください。それから直します」という感じで書いちゃってるのが多いです(汗)。

お近くにお住まいの方はぜひいらしてください。気取らない地味なイベントです。人数は天候に左右されますが、大雪でも慣行です。

人生は出会いがあるから楽しい

emailだけでなくfacebook, twitterなどの登場で全世界の人々が簡単に繋がるようになりました。

インターネットのソーシャルネットワークにはどうやら「パソコンの前に座ってキーボードを打つだけの、バーチャルリアリティの付き合い」というイメージがあるようです。そういう場合ももちろんありますが、現実世界で知り合うきっかけになることも多いのです。

昨日もそんな楽しい出会いがありました。

昨年暮れにボストン在住のジャーナリストの菅谷明子さんからメールをいただき、ようやく先日初めてお会いすることができました。「とりあえず自己紹介」と言いつつ、自己紹介が終わらないうちから話題があちこちに飛び火。菅谷さんご専門のメディア・リテラシー、互いの共通点である子育て、ジェンダー、教育問題、そして母親が職を持つことの影響など、途中にランチを挟むのが面倒なほど熱心に話しこんでしまいました。気がつくとランチ抜きで4時間半ぶっとうしのおしゃべりです。お嬢さんたちのお迎えというタイムリミットがなければ夜まで続いていたかもしれません。それくらい刺激的で楽しい会話でした。

菅谷明子さんは、News Weekの日本版勤務後にコロンビア大学の大学院に留学され、ワシントンDCでジャーナリストとして活躍された後、東大その他の非常勤講師、経済産業研究所の研究員を務められました。また、以下の2冊の本を出版しておられます。

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菅谷さんのご主人は、MITのMedia Lab(メディアラボ)の教授で副所長の石井裕氏です。頭脳は別として私のとの共通点が多いことを発見し、よそ様があまり分かってはくれないような伴侶の役割を菅谷さんに分かっていただけたのは嬉しいものでした。下記は石井裕氏を取り上げた日本のTV番組TBS 「夢の扉」です。


近々それぞれの伴侶を含めたダブルデートも実現しそうで、「ソーシャルメディアにはこういう出会いがあるから楽しい」と実感しました。

菅谷明子さんの子育てブログ「ボストン・ハーバードの街で育児」もぜひご訪問ください。

あけましておめでとうございます

ピクチャ 62008年の年末に始めた洋書に関するブログ「洋書ファンクラグ」と「洋書ニュース」は、洋書というニッチな分野ながらも、おかげさまでこの1年の間に1月のアクセス数が2万5千を超えるようになりました。出版社や著者から献本をいただきレビューや感想を求められることも増え、翻訳者や出版関係者との出会いもありました。何よりも嬉しかったのはブログ読者の皆さまとの出会いです。皆さまのおかげで、年末には洋書ファンクラブ「これを読まずに年は越せないで賞」といった読者参加型の企画も行うことができ、実り多き1年でした。

この「ひとり井戸端会議」や「才能を殺さない教育」「子供の才能を殺さないために親が読む本」などで私は以前から教育の問題点について何度か語ってきましたが、この1年は、ソーシャルネットワークを通じて交流した方々や得た情報の刺激で「私自身ができること」について考えるようになりました。

そうしてたどり着いた2010年の新企画が「洋書ファンクラブ ジュニア」です。

ピクチャ 7
 

この企画についてご説明する前に、私に強い印象を与えた2つの視点についてお話しさせてください。

まずは、ミューズ・アソシエイツ社長 梅田望夫氏の「知の英語圏日本語圏問題」です。
 日本人の前にそびえたつ「言語の壁」で梅田氏はこう語っています。
 

「英語圏に生まれ育った若者たち」は、それが世界のどこであろうと、別の意味でリアル世界の物理的制約を軽々と超えていく。

日本語圏で生まれ育った若者たちについてはどうでしょう?

学ぶことから働くことまで、ネットがさまざまな意味で「人生のインフラ」そのものへと進化する今、「言語の壁」と言語空間特有の文化に封じ込められるゆえの「文化の壁」がそびえたってくるのを、改めて感ずるのである。

もうひとつの視点は、Googleがいかにして生まれ現在に至ったかを描いた「Googled」というノンフィクションから得たものです。

著者のKen Aulettaは、Googleの成功に不可欠なものとして情熱とビジョンを挙げ、「ビジョンなしの情熱は焦点が絞れていても電池が入っていない機械のようなものである」と説明しています。テストの点が過剰に尊重されている日本の教育では、1つの問いに対して1つの”正しい”答えを高速ではじき出すことがあたかも知性や能力と勘違いされています。「情熱とビジョン」はそういった教育からは生まれません。かえってその可能性を殺してしまうことでしょう。

私が「洋書ファンクラブ ジュニア」の企画を具体的に考え始めたのは、オンライン産経ニュースでの梅田氏の「進化を遂げる英語圏」を読んだときです。特に次の部分が印象的でした。 

インターネットは既存産業に破壊的なインパクトを及ぼすと同時に、利用者には圧倒的な利便性や生産性向上をもたらすものだ。私は勝手に「知の英語圏日本語圏問題」と呼んでいるのだが、世界語と化した英語の非対称性ゆえの構造問題と理解しつつも「これだけの知的興奮の可能性が英語の世界にしかもたらされないのか」と個人的には残念な気持ちが勝る。「日本語で学べる環境」や「日本語による知の創造の基盤」の競争力をいかに維持するのか。ウェブ進化の恩恵を受けて新しい地平が拓(ひら)かれる英語圏を見つめながら、日本人として考えるべき課題は山積だなあと悩む昨今である。

アメリカに住むアジア系移民の子供たちを見ていると、次の世代を担うのはこれらの「世界のどこであろうと、リアル世界の物理的制約を軽々と超えていく」英語圏の若者だと確信させられます。彼らには、世界語としての英語の能力だけでなく、Googleが誕生できる創造的な土壌で培われた情熱やビジョンがあります。日本語圏で育つ子供たちが彼らに対抗できるように、わずかでも貢献できないものかと考えた末に思いついたのがこの「洋書ファンクラブ ジュニア」なのです。

小学生の時点から洋書を日本語の本と同じように楽しむ癖をつければ、たとえネイティブのレベルに達することができなくても、大学生になったころから世界中の情報をリアルタイムで得ることができるようになるでしょう。また、ディスカッションやレビューを書くことを通じて自分でものを考える習慣が生まれます。点数獲得にこだわらず知識を得ることそのものを愛するようになれば、波乱が予想される将来で生き残る柔軟性も生まれるでしょう。

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英会話教師の育成学校、アメリカの小学校や中学校でのボランティアと取材、子育ての体験などから生まれた「洋書ファンクラブ ジュニア」は、日本に住む子供を対象とした洋書の読書推進プログラムです。

少数限定の有料プログラムの正式スタートに先立ち、必要な情報を得るための無料パイロットプログラムを行いますので、ご興味がある方はぜひ「洋書ファンクラブ ジュニア」をご覧ください。

オバマ大統領、あなたの忠誠心はどこにあるのですか?

私は昨年の大統領選でオバマ大統領を支持し、勝利を心から祝った者のひとりです。
けれども、最近のオバマ・ホワイトハウスの動向には深く失望しています。
国民にとって、そして世界にとって、もっともプライオリティが高い問題を解決するために、政治的な駆け引きとして(マジョリティの国民にとって)プライオリティが低いもの (たとえば同性愛者の権利拡大)を、対抗する勢力に明け渡すという政治的取引の必然性は、納得できないものの、理解はできます。

けれども、就任後のオバマ大統領は、彼の約束を信じて闘って来た者たちよりも彼を失脚させることだけを目的にしている勢力に媚びているように思えてなりません。

それでも私は「彼が最も重視する医療制度改革を成し遂げるための政治的戦略であろう」と信じようとしてきましたが、上院案に関する一連の対応ですっかり失望しました。
米国の医療制度の抱える問題について私は1997年ごろから数年にわたり医学書院の「訪問介護と看護」でルポを連載してきました。その後もいろいろなところで言及したのですが、あまりにも長くなるのでここでは割愛させていただくとして、一言でまとめると米国の医療制度は崩壊寸前です。大幅な改革をしない限り、私たちの子供たちの世代がまともな医療を受けることは不可能です。

私の夫が企業を離れて独立したとき、幸いなことにマサチューセッツ州なので個人事業者が入ることのできるグループ保険に加入することができました。グループでは最もリスクが少ない(コンサルタント類)ために安いほうだというのですが、当時月額が650ドル(単純に1ドル=100円と計算すると、6万5千円)でした。それが毎年どんどん値上がりし、2010年は月額が1400ドル弱(14万円)になりました。10年間に倍以上の値上げです。
保険費の価格は収入には無関係です。つまり、月給が10万円しかない人でも月額は14万円ということです。たとえ高級とりだったとしても、職を失ってからこれだけの金額を毎月払うことは難しいでしょう。だから、米国の保険未加入者はどんどん増えているのです。

米国の現行の医療保険制度は、メディケア、メディケイド(高齢者、障害者、低所得者などを対象とした公的保険)をのぞき、企業が100%支配しています。Health Reform Watchによると、(わが家が以前加入していた)Aetna保険のCEO Ronald Williams の昨年の年収は $24,300,112(約24億円)です。このところ幸い大病をしていないわが家が支払う保険料の大部分は医師や看護師でなく、こういうところに行っているというわけです。

深刻な問題のひとつは、お金を儲けることが目的の企業では、高い検査や治療を与えないほうが得なので、治療拒否が生まれることです。担当医師が必要だと判断しても、医療の知識がまったくない保険会社が「その治療は必要ない」と拒否することがよくあります。病気の最中に保険会社と闘うことがどれほど身体に良くないか想像していただければおわかりでしょう。
もう一つの問題は、がんや糖尿病などの「preexisting condition(既存の疾病や障害)」があると、保険会社に加入を拒否されることです。また既存の疾病や障害(肥満もそれに入ることがある)があったことが判明すると、治療費の支払いを拒否することもできるのです。

ヒラリー・クリントンが失敗し、ハワード・ディーン(Howard Dean) が支持してきた医療制度は、基本的にカナダ、英国、日本、デンマークなどをお手本にしたユニバーサルヘルスケアシステムです。もちろん、現行のプライベート(企業)のシステムを取り除くことは不可能です。ですから企業のシステムを取り除くのではなく、現行のシステムに公的保険(public option)を導入することが提案されてきました。廉価で加入できるpublic optionを導入することで、企業に値下げを余儀なくさせるという案です。public optionには税金が充てられますから一時的に国民全体の負担は大きくなります。けれども、保険加入者が増えることと競争が生まれることで全体的な医療費は下がる、という考え方です。

多少の相違はあれ、オバマ大統領もこの案を押してきました。ですが共和党から(特に高所得者への税負担が大きくなる)public optionへの反対が強く、「国が生死を決める(death panel)」が含まれるといった奇妙な噂が故意に流され、実現すれば得をする低所得者までが「Tea party」といった過激な雰囲気のある反対運動を繰り広げています。こういったくだらない妨害しかできない現在の共和党は、国民のことをまったく考えない「なんでも反対党」に成り下がってしまったようで、残念でなりません。

2つの戦争と経済危機を引き継ぎ、このような物騒な雰囲気の中で政治改革を進めるのは不可能に近いことでしょう。ですからオバマ大統領の苦悩は想像できます。(就任後、瞬く間に歳を取ったと思います)。けれども、彼はそれを知っていて大統領になった筈です。大統領になった理由は、無益な戦争に終止符を打ち、国民のために医療制度を改革し、温暖化にストップをかけてグリーンビジネスを推進し、企業ではなく国民のための政治をするためではなかったのでしょうか?少なくとも彼を大統領にするために奔走した人々はそう信じています。

最近のオバマ大統領の「言葉」ではなく「行動」だけに注目すると、彼は自分の政治的理念を信じて応援した人々だけを無視しているように思えてなりません。

せっかく下院議長のナンシー・ペローシーが(薄められてしまったが妥協できる)法案の可決にこぎつけたのに、上院では、個人的な理由(コネチカット州には保険会社が多いため)で駄々をこねたコネチカット州選出のジョー・リーバマンの言いなりの案に折れてしまい、それに反対の意見を述べたハワード・ディーンをホワイトハウスが個人的に中傷するような反論をしています。

ハワード・ディーンをよく知らない人は、マスコミのせいで「変人」扱いしているようですが、それはまったくの誤解です。
コロンビア大学卒で医師のディーンは、共和党員として育ったものの民主党に移り、ヴァモント州知事として共和党員とともに数々の改革をなしとげました。その中には医療制度改革や全国にさきがけた同性愛者のシビルユニオン(結婚ではないが、それと同様の法的権利が得られる)などがあります。財政的には古い共和党の信念である「財政保守(fiscal conservative)」です。
ブログやmeetupでの草の根運動やネットを使った20ドルからの政治献金を始めたのもハワード・ディーンです。私は2002年の年末くらいからボストンのmeetupのメンバー(一桁)でした。戦争勃発前から「イラク戦争」には強く反対し、2004年の民主党大統領予備選では、それで他の有力候補から叩かれましたが、今振り返って彼がどれほど正しかったかを認めるメディアがいないのは残念でなりません。

また、民主党全国委員委員長として、これまで民主党が無視してきた南部の「red states(共和党が支配的な州)」にも働きかける「50 state strategy(50州戦略)」を打ち立て、その結果として民主党は議席を大幅に伸ばし、オバマ大統領はred statesでも勝利することができたのでした。当初、この「50州戦略」に反対してディーンと怒鳴り合いをしたのが、現在のオバマ大統領の首席補佐官ラーム・エマニュエル(Rahm Emanuel)でした。真相は分かりませんが、多くの人々の進言にもかかわらずディーンが厚生長官に選ばれなかったのは「エマニュエルがあのときのことを根に持っているからだ」という噂まで流れました。今回の医療保険改革でも、ディーンは「理想案を強行に押し続け、最後の最後にネゴシエーションをする」ことを提案してきましたが、エマニュエルは最初から共和党よりの軟弱プランを押してきました(これまでのいきさつについてはこんな意見も)。

その結果できあがった上院案は、通常の国民にとってはこれまでより税金がかかるだけで利益はほとんどなく、保険会社はさらに利益を得るというとんでもないものです。可決すれば、「可決した」ということが大統領の政治的勝利にはなりますが、彼を支持してきた人々の勝利ではありません。

民主党にとって苦しい状況と分かっていて「この案には賛成できない。否決して新たに始めるべき」とディーンが公言したのは、陰で直接ホワイトハウスに進言してきたのに無視されたための最後の手段なのです。それなのに、「閣僚になれなかったから、ビターなのだ」といったマスコミのコメント(たぶんエマニュエルあたりから来ている)が流れるのには憤慨です。

私がディーンが好きな理由のひとつは「忠誠心」です。私にとっての政治での忠誠心とは、「政治的勝利のために自分の理念を支えてくれた支持者を裏切らないこと」です。2002年から今まで彼の行動を追って来た者たちは、ディーンが自分の信念を頑固に貫くことを知っています。彼らは、ディーンがどれほど真摯にオバマの勝利のために闘ってきたことを知っていますから、今のホワイトハウスの対応には自分自身が裏切られたように感じているのです。ディーンは信念を貫くためには、政治的な「討ち死に」をためらわない潔さがあります。これはずっと変わりません。マスメディアはほとんど触れませんが、ディーンが応援するからオバマを応援してきた者たちが陰でどんどん脱落しています。

ディーンの反対に対する大統領上級顧問デービッド・アクセルロッド(David Axelrod)の「insane(正気ではない)」という反論

http://www.msnbc.msn.com/id/32545640

Visit msnbc.com for breaking news, world news, and news about the economy

それに対するディーンの答え(みよ、この落ち着いた対応を!どこがinsaneなのか)。詳細を聴いていただければ、なぜ彼が反対しているのかご理解いただけるでしょう

http://www.msnbc.msn.com/id/32545640

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オバマ大統領のノーベル平和賞とアフガニスタン戦争

オバマ大統領のノーベル平和賞受賞スピーチを聴きながら、あれこれ思いました。(聞き逃した方はこちらをどうぞ)

ナチスドイツに対して交渉では平和は実現しなかったという「just war(正義の戦争。正当化される戦争)」の観念は理解できます。「平和」を願い、デモするだけでは平和を守ることは不可能です。

けれどもオバマ大統領のアフガン増派の決断は政治的なものだったと思います。もしアフガンから撤退して9/11のような悲劇が起こったら彼が目標にするgreater goodを成し遂げることはできません。私が彼の立場であったら撤退する勇気があったかどうかわかりません。それでも私はアフガニスタンからの撤退が正しい判断だったと思っています。アフガニスタンでの勝利というのはまずあり得ません。またnation buildingも無理です。経済的にも疲弊することがわかっています。そして、もちろん失われる人命が最大の問題です。

オバマ大統領がこのような決断を下さずにはいられなかった背景には、Party politics(党派政治)があります。彼が国のため世界のために実現しようとすることに対して、最近の共和党は、ラッシュ・リンボーサラ・ペイリンのように「オバマ大統領は米国民ではない」、といったデマを鼓舞し、ティー・パーティのような過激なグループ(下記のYouTubeをごらんください)からの支持を歓迎しているところがあります。チェイニー元副大統領のように、日本の天皇に深々と頭を下げたのをここぞとばかりに"What I see in President Obama is somebody who bows before foreign
leaders and spends his trips aboard primarily apologizing for U.S.
behavior. I find that very upsetting."と批判して楽しむばかりで、一緒に米国の経済危機や世界平和のために働こうとしません。オバマ大統領の政策は決して左よりではなく、共感を覚える共和党員もいるはずなのですが、党の勢力に逆らうことは自分の政治生命にかかわるので党のリーダーに従うばかり。David BrooksChristopher HitchensLincoln Chafeeなどの昔ながらのfiscal responsibility(財政責任)を重視する保守派のジャーナリストや政治家たちは「本当の保守ではない」と非難される雰囲気があります。また、もっと深刻な傾向は、保守派に学歴や知識を批判するanti-intellectのムーブメントが広まっていることです。

民主党は共和党よりも党がまとまっていないので、かえって健全なところはあるのですが、それでも古い党のやり口で有能な政治家をつぶしたり、得票力を持っている団体を優先したり。

二大政党があることでバランスをとるのが理想なのですが、それがまったく機能せずに相手を潰すことしか考えていないようです。リンボーが「I hope Obama fails (オバマが失敗してくれればいい)」と過激なことを言っても、人気ラジオ番組の司会者を敵に回してまで批判しようとする保守派がいません。そんな番組ばかり聴く国民たちは、だんだん両極に分裂してゆきます。

オバマ大統領に「アフガン兵力増派」という決断をさせた背景にうんざりする私は、「いっそみんな無所属になってくれないか」と願うわけです。

オバマ大統領の医療制度改革に反対するティー・パーティの雰囲気です

ロンドン観光その4

昨日はアンティークで有名なPortobelloマーケットへ。

寒いのに、さすが土曜日ですごい人ごみでした。いったん1つの方向に進み始めると途中で方向を変えることができなくなるくらい。

高校生の娘はジュエリーとコートを探していたのですが、彼女はけっこう節約家なので無駄遣いの心配はありません。私が心配するのはすぐ衝動買いする蒐集家の夫です。アポロだけでなく、腕時計、カフリンク、ピン、古い飛行機の部品、ランド・ローバー、アンティークの家具、古美術品…ありとあらゆるものに興味を抱いて集めてきたので、わが家の私のスペースは減るばかり。最初に「大きなもの、重いものは買わない」と約束させ、まめにチェックしました。でも、娘が「これが欲しい」とも言っていないのに、「古い鍵をネックレスにすると素敵だね」と興味を示したからといって1800年代の鍵を40ドルで買ってしまうのですから油断はなりません。すでに持っているタイプのカフリンクを「面白いデザインだから」という理由で買いかけていたところを眼力で阻止しました。

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買い物で満足した後は、念願の中近東料理の探索です。タクシーの運転手に尋ねたところ、「レバノン料理はどうか?ロンドンで一番美味しいところを知っている」というので連れて行ってもらいました。シェパーズマーケット(Park LaneとPicadillyのコーナー)にあるAl Sultanというお店です。午後3時半という中途半端な時間だったので予約せずに入れたのがラッキーでした。レバノン料理は初めてだったのですが、トルコ料理やギリシャ料理に似ていて、それらやエジプト旅行中に食べたどの料理よりも美味しくて、感激しました。前菜を5つか6つ注文し、メインのMix grillを1つ注文、というのが慣れない者には良い選択のようです。一番最初に洗っただけのトマトやキュウリが丸ごと皿に盛られて出されたので、「これどうやって食べるのですか?」と質問したら、不可解な顔で「ナイフで切って食べる」という答えが戻ってきました。そういわれてみればそうかもしれませんが、やっぱり尋ねますよね。

その後は娘のリクエストで映画Dorian Grayを観に行きました。これは米国では今のところ劇場公開の予定はないので私も賛成。オスカー・ワイルドにはまったく興味のない夫を説得しました。

「たぶんR指定だよ」と私が予告したとおり「15歳以上(英国版R指定?)」でした。夫が「こども割引は?」と尋ねたら窓口の人が「これは15歳以上指定ですからこども割引はないですよ」と苦笑。どんな親だと思われたことか。。。

ストーリーの概要はDorian Grayでしたが、ワイルドの皮肉な口調があまり反映されていないホラーのような感じで、娘は「too sexualに作りすぎている」と苦情。★5つを満点とするならば★3つ程度です。ロンドンの雰囲気と衣装は素敵でした。主役のDorianの美しさは期待に背いていないかどうか娘に尋ねると「Twilightのロブの選択よりずっとまし。それに髪が良かった」。それを受けて夫も「確かに髪が良かった」。ということで、これから観る機会のある方はDorianの髪に注目してください。

今日これからボストンに戻ります。

ロンドン観光その3

ロンドン3日めは、大学の短期交換留学プログラムで英国行きを狙っている(他の言語を学ばずにすむから)娘の希望でケンブリッジへ1日旅行。

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アメリカで最も古い大学がどれかというのは論議の的ですが、ハーバード大学で1636年。今年800年の歴史を祝うケンブリッジの卒業生名簿にはアイザック・ニュートンやフランシス・ベーコンなんかが並んでるんですからスケールが違います。

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図書館がまたすごい。ニュートンと手書きのノートやくまのプーさんの原稿を観ることができます。娘もこの古さがすっかり気に入ったようで、「アメリカでは都会の大学、英国では小さな町の大学」と勝手なことを企んでいるようです。

そして夜はまったくムードを変えて、ミュージックPriscillaです。

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これは映画The Adventure of Priscilla, Queen of the desert をミュージカルにしたものですが、映画にも増して娯楽性たっぷり。誰でも知っているヒット曲の数々とドラッグクイーンのリップシンキングに、つい参加してしまう観客が多くて(両隣の観客はずっと歌っていました)、会場全体がパーティのようでした。衣装も豪華で、ユーモアもたっぷり。人気があるショーなので、チケットはもちろん完売で、ずっと前に買っていた私たちはラッキーでした。

エール大学在学中からシアタービジネスに深く関わっているご夫妻とショーの前に夕食を一緒にしました。ご主人はtickets.comを学生時代にスタートした方で、奥様はシアターの監督や美術監督などを代表するエージェントです。プロの視点から現在最も素晴らしいショーは何かとかいろいろ良いお話を聞かせていただいたのですが、時間があまりないので別の機会に。

London観光その2

睡眠3時間で12時間ぶっとおし観光を遂行した娘は、ホテルに着くなり眠り込んでしまい、時差もなく朝まで爆睡。「かわいそうだから寝られるだけ寝させてあげよう」と思っていたのですが、仕事がある夫につき合って午前4時すぎに起床した私はお腹がすいてきたので9時に起こしました。

そうしたら14時間近く寝たというのに「なんで起こすの?」という態度。「ティーンなのだから仕方ない」というのが本人の弁。

まずはホテル近くのお店でイングリッシュマフィンやクロワッサンを買い、バッキンガム宮殿の前にあるSt. James's Parkにて鳥さんたちが集まる池を見ながら朝食。

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Please Do Not Feed Pelicanという標識がありました。「じゃあ、鳩やカモメにはエサをやってもいいのかな?」とふと疑問に思いましたが、鳩やカモメが空飛ぶドブネズミ的存在なのを知っているので無視。

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まだ疲れているから昨日の続きでThe Big Bus観光をしたいという娘の提案で(チケットは48時間有効なんです)、今日は青バスを使って違う場所を走りました。2階建てのバスの最前席からの眺めはなかなかのもの。時代小説に出てくる場所などがわかって娘も大満足でした。

計画していたのではないのですが、tkts というLeicester Square にある公式シアターチケットディスカウントでOliverのとっても良い席(バルコニーの最前列)を確保できたので、そこへ。

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シアターはコベントガーデンに隣接しているので、夜のコベントガーデンをわずかながらも楽しみました。(これで娘は小説にコベントガーデンが出て来たら「なるほど」と想像できるわけですね)

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 Oliverは「せっかくLondonだから」という娘の提案だったのですが、セットの素晴らしさと子役たちの踊りや演技が可愛くて、大正解でした。

 
Omid Fagin役がMr. BeanのRowan Atkinsonだと他の観客の会話で耳にしてそれを書いたのですが、昨日出かける前に夫にそう言うと、「それはつい最近までのことで今はPirates of the Caribbeanなどに出演したOmid Djalili(左の写真)」とのこと。そのときには時間がなかったので、24時間遅れですが今訂正させていただきました。どおりで「Mr. Beadnの演技とはずいぶんちがうな〜」と思ったわけでした〜coldsweats01

金曜はケンブリッジの日帰り旅行。そして、夜は大学時代からシアタービジネスに深く関わっているご夫妻と夕食+ミュージカルPriscilla鑑賞の予定です。プロの目からのシアター談を期待しています。わくわく。。。

ところで、ヨーロッパのシアターはこういう雰囲気がとっても素敵ですよね。

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