アメリカでの増改築体験:建築家を選ぶ

夫は、出張からもどったばかりの週末でも午前3時か4時に起床してメールをチェックし、エクササイズをしてから8時にはオフィスに入るワーカホリックです。

ジョーが共同経営する設計事務所がデザインした病院

ジョーが共同経営する設計事務所C/W Design Groupが設計した病院の例

夫が出勤する時間にはオフィスビルはまだ静かなのですが、夫のオフィスの向かいにある建築事務所では既に誰かが出勤しています。
「人数が多い事務所じゃないのに、早朝でも、夜中でも、必ず電気がついていて、誰かが働いている」と夫は感心していました。

そのうちに夫は建築事務所の共同経営者のジョーゼフ・ウェルチさん(ジョー)と知り合い、「性格がとてもいい人。君も会ったら気に入るよ」と語るようになりました。

ジョーが共同経営しているC/W Design Groupは病院の設計が専門で、この分野では30年以上のキャリアだということです。夫がオフィスビルで唯一お喋りを楽しむ「隣人」だったのに、事務所の成長でオフィス空間が狭くなり、ジョーは別のオフィスビルに引っ越ししてしまいました。

「これほど忙しくて急成長しているということは、仕事ができるという証拠。とても気立てがいい人だから、家を増改築するとしたら彼に設計を頼みたい」そう夫は言っていました。

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アメリカでの増改築体験:夫婦間のネゴシエーション

前にも書きましたが、アメリカでの自宅増改築は、家の持ち主が関わる範囲が大きいのが特徴です。

私にはそのプロセスがまったく想像できなかったのですが、増改築を体験した人たちと会って話を聞くうちに、少しずつ見えてきました。これは、情報を得るだけでなく、根本的に重要なステップでした。

その中でもアンとスティーブというご夫婦が一番大切なことを教えてくれました。

"Walter Gropius photo Gropius house Lincoln MA" by Jack E. Boucher - Library of Congress

“Walter Gropius photo Gropius house Lincoln MA” by Jack E. Boucher – Library of Congress

二人は、ワシントンDCの近郊でミッドセンチュリー・モダン様式の自宅を改築し、建築雑誌の特集に取り上げられたことがあります。けれども、それを楽しむ暇もなく、北部に引っ越しすることになったのでした。
その二人と一緒に、私たち夫婦は遠足とランチを計画しました。遠足は、前号で触れたドイツ人建築家Gropiusが暮らした家「Gropius House」の訪問です。

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アメリカでの増改築体験:デザインコンセプトで合意する

Techbuiltのオリジナルのパンフレットより

Techbuiltのオリジナルのパンフレットより

20世紀半ば、アメリカではフランク・ロイド・ライトの影響を受けたモダンな建築様式が流行りました。それらが現在「mid-century modernist(ミッドセンチュリー・モダン様式)」つまり20世紀半ばのモダン建築様式と呼ばれています(アメリカのミッドセンチュリー・モダン様式は、ドイツの建築家Walter Gropiusが設立したBauhausなどの影響も受けています)。

1950年代、ハーバード大出身の建築家Carl Kochは、北欧のシンプルな建築物を参考にして、中流家庭の若い夫婦でも広い新築が買えるようにコストを抑えたモダンな建築方法を編み出しました。それがTechbuiltです。Kochは周囲の森林や自然と溶け込めるような場所にTechbuiltのクラスタを作り、それらが今でも全米にいくつも残っています。歴史的地区に指定されたクラスタもあり、そのひとつが私たち夫婦が住んでいる地域です。興味深い偶然ですが、Gropiusの二人目の妻Iseが亡くなったのが、私たちが住むLexington町なのです。

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アメリカでの増改築体験:最初に考えなければならないこと

今年わが家の増改築をすることになりました。

日本では「リフォーム会社」に依頼して希望を伝え、詳細にはあまり関わらないのが一般的だと思います。けれども、アメリカ合衆国では依頼人(家の持ち主)が相当関わらなければなりません。また、どれほど関わるのかもケースバイケースです。

私にとっても初めての経験なので、何もかもが新鮮です。せっかくの貴重な体験なので、ブログでその経過をご報告していこうと思います。

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