別れのために(1983年。思潮社ラ・メール入選作)

やさしい女と断定することで

やさしい男の群れの中に

逃げこんでしまう

同じになるふりで

別になりきる君を

だから

許さない

やさしい

なんて呼ばせない

気紛れに

花を食い散らしながら

歩いてゆく

君の家へ向かう道

血の味のくちびるを

ぬらぬら光らせて

居所を尋ねれば

返ってくる答えも

塩の匂いがするはず

わたしたちはこの道を

猫のように怯えて歩いた頃から

すでに

加害者であり

被害者であり

どちらともなく言いだせば

どちらかを取らなくていけない

ネクタイを乱しもせず

逃げてゆく君を追って

今日は

ハイヒールのかかとをとがらせて歩く

道行く誰もを証人にして

君は昏い涙を演じたが

彼女らの興味は

ただ血を見ることだけで

ここだけの

ないしょの話

じつは こんや

彼を喰いにゆく

カマキリのねむりの儀式ヨッて

回覧板にして

ひろめて下さい

でも君の

甘ったるい指がたどれば

いつだって

ゼロにできる奇跡に

つまり

わたしが君を孕むおそれはない

だから

安心して

レコードに針をおとし

ステップは軽く

リターンスイッチはそのまま

脳細胞が飛び散るまで

くるくるまわしてちょうだい

だんだん

君が遠心力で分離してゆく

ふやけきった

ココロたちを沈殿させ

パラノイアのかおで

うわずみのわたしを飲み干せば

わたし自身の行為として

明日からは

ひとりになれる

だから

やさしい

なんて呼ばせない

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