才能を殺さない教育-はじめに

この作品を書くきっかけになったのは、娘の通う公立学校でのボランティアだった。

日本での公立学校生活をあまり楽しんだとはいえない私は、住んでいるマサチューセッツ州の町立公立学校に対して殆ど期待はしていなかった。いくら教育で有名な町であっても、日本よりは教育程度は劣っているであろうし、虐めだってあるだろうと決めつけていた。だから、学校の教室に入り込んで直接教師や同級生を監視できるボランティアを希望したのである。

まず私が驚いたのは、小学校での虐めがないことであった。これは、私自身の観察のみならず、小学生、中学生、高校生を取材して確認したことである。次に私の先入観を覆したのは、学問的達成度である。小学校ではまったくといってよいほど詰め込み教育をしないのに、多くの生徒が中学校ですでに日本の大学生と同程度の論文を書き始め、世界史と国際政治に関しては日本の大学生よりも詳しく、数学でも中学校で日本の高校レベル、高校で大学レベルに達している。これは誇張ではない。この町の中学校を卒業してから日本に帰国し、のちに慶応大学の医学部に入学した男子生徒も、同じ見解を持っている。そして最大の驚きは、生徒の大部分が「学校好き」だということである。

なぜ、人口二万人程度の小さな町の誰でも入学できる公立学校がこれほど理想的な公立学校を作り出すことができたのか?

私が取材を始めたのは、本を書くためというよりも、純粋な好奇心からだった。全てを探り出したとは思わないが、この経過で母親として貴重な子育てのコツを学んだと思っている。

あれから3年経ち、このとき取材した小学生は中学生に、高校生は大学生になっている。何人かとは継続的に連絡を取っているが、みな自分の現在の状況に満足しているようである。私の娘も、大好きだった幼稚園よりも小学校のほうが気に入り、小学校よりも中学校、中学校よりも高校のほうが楽しいと言う。取材を通して学んだことは、実生活で役立っているようである。

注)この未発表作品は2004年から2006年にかけて取材したもので、登場人物の年齢、学年、職業などは取材当時のものです。

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