アメリカでの宗教と教育の関係

日本では馴染みがないことですが、アメリカ全土では、パーカー氏や「アーティクル8」のようなグループが大きな政治力を持っています。彼らの多くは、聖書の教えに極端に忠実なキリスト教保守派であり、同性愛や同性結婚に強く反対しています。

アメリカの公立学校で問題になるもうひとつのテーマが「進化論」の扱いです。

たとえば、1925年にテネシー州デイトンで生物学の教師が進化論を教えて有罪になった「スコープス裁判」が有名ですが、公立学校の生物の授業での「創造論」と「進化論」の綱引きは、今でも続いているのです。

1999年に公立学校のカリキュラムから「進化論」を排除したカンザス州の教育理事会は全米からの嘲りの対象になり、翌年の選挙では宗教保守派が席を失って「進化論」が復活しました。しかし、2004年の選挙では州の「同性婚禁止法」と抱き合わせでキャンペーンをした宗教保守派が復活してふたたび教育理事会は保守派が過半数になり、今度は「Intelligent Design(インテリジェント・デザイン)」という造語を使って「創造論」を公立学校の生物学のカリキュラムに取り入れようと試みています(2004年現在の調査)。

ここで彼らが「神」という言葉を避けたのは、「米憲法修正第1条、国教条項」が公立学校で特定の宗教を教えることを禁じているのを承知しているからです。彼らは、「進化論」は証拠のない「説」に過ぎないので、「神」ではなく知的存在によって創造されたという「説」も生物学の授業で同列に扱うべきであると主張しているのです。

 

テキサス州オデッサ町の教育審議会(レキシントンでは教育委員会に相当する)は、「Bible study(聖書の学び)」を公立高校の選択科目にすることを2004年4月26日に全員一致で決定しました。MSNBCニュースによると、聖書クラスの支持者300人以上で満席になった審議会とその会場の外の雰囲気は、歌や祈りで「まるで教会の礼拝のよう」だったということです。

 

人間の起源に関する「進化論」と「創造論」の対立はよく知られているのですが、バランスのとれた宗教観を広めようとする「Religious Tolerance. Org」のサイトによると、もっと複雑なバラエティがあることがわかります。

その中で主要なものは次の通りです。

 

○創造科学

  保守的キリスト教者にもっとも人気があり、信念は次の二つに分かれる。

・新地球創造

人間を含む生命体と地球、宇宙のすべては神により過去一万年以内に創造されたという説。創造科学論者の大多数が信じている。

・旧地球創造

地質学や放射分析から地球は何千億年以上前に創造されたと信じるが、地球や宇宙を創造したのは神である。

○自然主義的進化論

私たち日本人に一番なじみの深い説。アメリカでは多くの人がこの説を信じる者は「無神論者」だと考えている。

○有神論的進化論

自然主義的進化論と同様のプロセスが起こったと信じているが、それらは神の意志によるものであり、神がコントロールしていると信じている。

 

それでは、ふつうのアメリカ人は何を信じているのでしょうか?

 

2001年のギャロップ世論調査「人類の起源と進歩についてあなたの見解にもっとも近い説明はどれですか?」の結果は以下のとおりです。

 

1)人類は現在よりも劣った状態から何十億年以上かけて進歩したが、神がその過程を導いた。(有神論的進化論)37%

2)人類は現在よりも劣った状態から何十億年以上かけて進歩したが、神はその過程には無関係である(自然主義的進化論)。12%

3)過去一万年以内に神が現在とほぼ同じ状態の人類を創造した(創造論-新地球創造)。45%

4)その他。意見なし。6%

 

ダイアモンド中学校では、科学ではなく6年生の社会「古代文明」の一部として「創造説」を学びます。でも、この授業では「創造説」は「創作」として扱われており、「創造神話」を書くプロジェクトでは、自由に物語を作りあげても非難されることはありません。

レキシントンの教育者やPTAの多くが日本のように「自然主義的進化論」があたりまえのように扱っているので表面化しないのですが、実はレキシントン町にも「インテリジェント・デザイン」を密かに推し進めようとする勢力あり、教育委員の候補を出して来ています。けれども、彼らは学校のボランティアなどでネットワークを築き上げていないため、今までのところ十分な支持者を集められないでいるようです。

 

*この文章は2004年に書かれたものであり、現在は状況が変化している可能性があります。