私が憧れた「鉄の女」

マーガレット・サッチャー元英国首相が亡くなられました。

彼女については、個人的な思い出があります。

私が初めて英国に行ったのは1981年、21才のときで、夏期語学講座を受講するためでした。

ダイアナ妃がチャールズ王太子と結婚した夏でもあり、当日はバッキンガム宮殿にも行きました。柵によじ上っていたら警官に「危ないから降りなさい」と注意され、その警官から赤い風船をもらって大学の寮に戻ったところみんなに笑われました。ダイアナ妃よりも1つ年上だったのに、子どもだと思われたのでした。


でも、私の心に最も強く残った英国女性は、ダイアナ妃でもエリザベス女王でもなく、首相のマーガレット・サッチャーだったのです。夏期語学講座を受講していた私が英国人教師たちから学んだサッチャーの人物像はあまり好ましいものではなかったのですが、とても興味深い人物だと思ったのです。

当時の英国には、今よりも階級制度の名残や旧来の男女の役割が根強く残っていましたし、大地主層が政権の支持基盤だったトーリー党が前身の保守党は、特権階級の男性の集団だったのです。それなのに、労働者階級出身の女性が50才の若さで党首に選ばれ、衰退していた党を蘇らせて54才で首相になったのというのです。しかも、既婚で二児の母だと知り、単純ですが、尊敬し、憧れたのです。

次に私が英国に住んだ84年には、82年のフォークランド紛争での強硬な姿勢が国民に支持され、女首相の人気はずいぶん上がっていました。そして、86年にふたたび戻って来たときには、サッチャー首相とエリザベス女王という二人の強い女性が率いる英国が、あたかも当然のような雰囲気になっていたのです。

11年半の任期の終わりには国民だけでなく党内での人気も下がってしまったが、彼女が成し遂げたことは、英国の長い歴史の中でも、並外れたことだと思います。

サッチャー元首相とは根本的に信念が異なる私ですが、尊敬の念は失いませんでした。 ですから、引退直後のサッチャーが保守党の資金集めで来日したときには、機会に飛びついたのです。

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「I have always admired you. And, I'm very honored to finally meet you.」と握手しながら伝えると、サッチャーさんはにっこり笑って、「That’s very kind of you.」と答えてくれました。

緊張していたのでそのあとの会話の内容はよく覚えていないのですが、彼女がとてもリラックスしていたことと、それにもかかわらず周囲の男性陣があたふたと走り回っていたことははっきり覚えています。

男女含めてあれほど威厳がある人物には、ほかに会ったことがありません。

ご冥福を祈ります。

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