才能を殺さない教育 第二章 成功の定義(その4)

客観的な成功を狙うと、幸福にはなれない

取材した生徒たちの何人かはすでに大学生活を経験している。
親ではなく、本人が大学を選び、学力が適していた者は、大学生活を楽しみ、アイビーリーグやMITといった世界で最高の頭脳が集まる大学でも良い成績を取るのには苦労していないようである。
競争の激しいレキシントン高校で成績がふるわず、さほど有名ではないが小規模の優良大学に行った男子生徒は、大学で非常に良い成績を取り、希望した大学院にはすべて入学が認められた。「レキシントン高校では、あまりにも頭の良い子が多すぎて、大学に入るまで自分がこんなに頭が良いとは知らなかった」と彼は笑った。「高校で知らない間に勉強の仕方を学んできたようだ」と私に言ったのは彼ばかりではない。レキシントン町と似通った近隣の町で、競争の激しい公立高校を卒業し、ブランド名が高くない優良大学に入学した者の多くが、大学でさほど努力せずに良い成績が取れることを指摘している。

親が「うちの子は**大学に入りました」と自慢するために大学を選んだ場合、あるいは自分自身がライバルに勝つために有名校を選んだ生徒は、合格したときには嬉しいが、入学した後での幸福度は自分で選んだ生徒に比べると低いようである。
幸福の基準を自分の価値観ではなく、他人の価値観に置くと、数字ではっきりとわからない達成には満足しにくいからではないだろうか。
また、学業以外の理由(スポーツや音楽)で実力以上の大学に入学した者は、学業がふるわずに苦労している。

せっかくアイビーリーグの大学に入学できても、そこで良い成績を取れなかったら大学院には入りにくくなる。かえって、ブランド名が高くない大学で良い成績を取った者のほうがアイビーリーグの大学院には入りやすいのである。

しかし、大学がそうであるように、有名校の大学院に入学するのが成功だという考え方も、他者の評価で自分の幸福をはかっているのは同じである。他者の評価に頼っているかぎり、人は決して幸福を実感することはできない。

成功を実感するためには

私と同年代(40代から50代)で成功を実感している人々の共通点は、「自分の仕事が好きだ」ということである。

大学で都市計画を教えている教授は、夕食を一緒に取るたびに世界各地で自分が関わっている都市計画を身振り手振りを交えて語ってくれる。彼の話を聞いていると、この世に都市計画ほど面白い分野はないように思えてくる。

夫のすぐ下の弟は、日本人どころかアメリカ人でも聞いたことがないような大学を卒業し、最初の職は中堅企業の営業員でしかなかった。それが、いくつもの変遷を経て、現在では日本人でも知っている大企業の重役になっている。自分に自信が持てない青年時代を過ごした彼は、仕事を経てようやく自分の得意分野と価値を知り、自分を好きになったようである。彼のカリスマ性は、仕事を通しての自己発見にあったといえるだろう。

私の夫は、インターネットを中心としたマーケティングとPRの専門家として著作のかたわら講演で世界各地を飛び回っている。もともとは、ウォール街で金融関係の仕事をしていた彼が、まったく異なる分野の専門家になったのは偶然のことではない。
最初のステップは、「大学でこれを専攻したらこの職業につかなければならない」という既成の概念を捨てたことである。そして、次の大きなステップは、「会
社の重役」という他者の評価による成功の概念を捨てたことである。独立してからの幸福感は、今とは比較にならないと彼は言う。

少し年上になるが、引退した小学校の校長は、70歳を超えた現在でも町のボランティアのかたわら大学院で校長をめざす学生を指導している。彼にとっては、教育こそが人生の情熱なのである。

上記の4人の共通点は、MIT,ハーバードなどの大学生あるいは卒業生を相手に講義をする立場にありながら、自らはそれらのブランド大学を卒業していないということである。また、彼らは自分のやっている仕事が好きで、「これ以外のことをやっている自分は想像できない」ということである。
入学した大学で成功は決まらない。そして、好きなことをやる、というのが成功への一番の近道なのである。

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