アメリカの大学入試がよくわかる良心的な書『アイビーリーグの入り方』

以前からこのブログなどでも語ってきたことですが、アメリカにはハーバード大学以外にも非常に優れた大学が沢山あります。ハーバード大に入学した生徒よりも優秀な学生が、積極的に別の大学を選ぶことは、日本人の皆さんが想像するよりずっと多いのです。

むしろ、アジア人に人気がある(ゆえに同じような生徒が集まる傾向がある)ハーバード大を避けるアジア系の学生もいますし、「一番」というブランド力にこだわる学生が集まるのを嫌って避ける学生もいます。ひいおじいさんの時代からずっと「イェール」だから同じ大学に行くという人もいますし、「ブリガム・ヤング」や「ノートルダム」のように宗教で選ぶ人もいます。ヒラリー・クリントンが卒業した「ウェルズリー」は、女性が男尊女卑の傾向に邪魔されずに強いリーダーシップを身につけられることで有名です。ですから、日本のように偏差値のはっきりした序列などはないのです。

また、アジア系の学生はSATという統一テストの点数にこだわりますが、このテストは練習さえすれば高得点を取ることができますので満点でもさほど有利ではありません。アメリカの大学は、テストの点を取ることだけが上手な生徒を優遇しないのです。

これらの日本人が誤解しがちなアメリカの名門校や大学入試のシステムについて、非常に良心的に解説しているのが冷泉彰彦さんの新著『アイビーリーグの入り方』です。


この本は、これまでよくある大学院留学に関する本ではなく、高校から直接アメリカの名門大学に入学するためのガイドブックです。とはいえ、ノウハウの手引ではなく、「合格するためには、どんな基準をクリアすべきか」(本書より引用)ということに絞っています。

留学を狙っている人のための本ですが、アメリカの大学入学がどのようにして決まるのか興味を抱いている人にお薦めしたい本です。というのも、アメリカの大学の入試(合否決定)については、日本の大学関係者の間でもまだまだ誤解が多いと思うからです。

これまでにも「私はこうやって自分の子どもを●●大学に合格させた」といった類の本がありました。それにはモヤモヤした違和感を覚えてきたのですが、冷泉さんの本は違いました。距離を取った公平な視点で、広い範囲にわたって事実を確認して書いた、たぶん初めての本ではないかと思います。

私も何年も取材してきたテーマですし、娘の大学進学を体験したのでけっこう詳しい知識があるつもりです。でも、冷泉さんの記述には同感することだらけで、特に付け加えたいことが見つかりませんでした。引用したい場所に印をつけていたのですが、多すぎて途中でやめたくらいです。

すべて重要な情報ですが、ことに日本とアメリカの大学が期待する学生像の違いには注目していただきたいと思います。アメリカの大学を知らない方には「眼から鱗」のはずですから。

タイトルだけを見るとやや挑発的ですが、それは読者に手にとってもらうための出版社の営業的な決断でしょう。内容は、アイビーリーグ大学だけに限定されていませんし、それ以外にも非常に優れた大学があることや、学ぶ学問によっては別の大学のほうが良いといったことなどもきちんと書かれています。そこにも非常に好感を抱きました。

「厳選30大学データ」も、たぶん紙面の都合で苦労して削られたのではないかと思いました。
アメリカのトップレベルの大学(いわゆるTier1に属する)はとても多く、たとえトップ100でも全員が同意するようなリストはできないでしょう。というのも、アメリカには日本のような偏差値によるランキングなどはなく、冷泉さんが明記されているように、地域性や両親の経済的な都合、学びたい学問、就きたい職業など多くの要素が絡んでくるからです。

たとえば、娘が通っていた高校でアイビーリーグ大に進学した学生と同等の成績の生徒に人気があるワシントン大学(セントルイス)、ローチェスター、タフツ、 ウィリアムズ、アマースト、ミドルベリー、ヴァンダービルト、エモリーなどは冷泉さんのリストには入っていません。
けれども、それは東海岸に住んでいる私たちの視点だけではなく、中西部や南部、西部の住民の視点、そして私立だけでなく公立も含めたいという著者の配慮なのでしょう。本文の中には登場するカリフォルニア工科大学(マサチューセッツ工科大学と同レベル)などが含まれていないのも、たぶんそういった配慮のひとつだと思います。

つまり、この「厳選30大学」は「米国のトップ30大学」ではない、ということだけは読者にしっかり理解していただきたいと思うのです。
厳格な偏差値ランキングに慣れている日本人の方は誤解されるかもしれないと思い、(著者を勝手に代弁して)付け加えておきたいと思いました。

私も拙著『ジャンル別 洋書ベスト500』で最後の最後まで500に絞るのを迷いました。数年前に出たものよりも読者が知らない新刊を優先しましたし、選んだ後で「あっちにしておけばよかった」とか「入れ忘れた」といった本が沢山あります。読者にもいろいろと指摘されましたが、都合上500に絞らざるを得なくなっただけで、リストに含まれている本が含まれていない本より絶対に優れているわけではありません

いずれにせよ、日本での将来に不安を抱いている学生には、アメリカの大学に行くことで異なる道が開けることがありますから、ぜひチャレンジしていただきたいです。(日本での知名度が低いゆえに)日本人があまり行かない大学を選んだほうが、現地の友だちが作りやすかったりもします。そういう繋がりが将来仕事を世話してくれたりしますので、それも考慮に入れて選んでみてはどうでしょうか?

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