作家の井上ひさしさん死去

作家の井上ひさしさんが肺がんで亡くなったというニュースを見ました。75歳でした。

小説新潮長編新人賞の受賞でお会いしただけでしたが、とても親切な方でした(下記の写真は2001年のもの)。

 shinchou

幼い時、最初に夢中になったTV番組が「ひょっこりひょうたん島」でした。

井上ひさし氏については後年DVのこととかいろいろあり複雑なところもありますが、ディナーをご一緒させていただいたときには、手放しで褒めてくれたりアドバイスを与えてくださったり、とても高名な作家とは思えないほど腰が低く、親切な方でした。私はその思い出を大切にしたいと思います。

お会いした日にあれこれ計画したことは実現しませんでしたが、私はけっこう異なる未来を楽しんでいます。もう一度お会いしてそういったことをお話ししたかったです。ご冥福をお祈りします。

オバマ大統領の失脚を狙う共和党のスターはこんな人たち

オバマ大統領へのフラストレーションについて以前に書きましたが、彼の立場を考えるとなんとか頑張って欲しいと応援せずにはいられません。

私が理解できないのは、現在の共和党の徹底的な「何でも反対党」ぶりです。ブッシュ大統領のもとで自分たちが作り上げた負債をオバマ大統領のせいにするだけでなく、ブッシュ大統領のもとで自分たちが賛成していた政策にまでオバマ大統領が取り入れたとたんに反対する理由を見つけるのですから。オバマ大統領の失敗は米国の恐慌を招く可能性が高く、米国の恐慌は世界恐慌を招きかねません。その危機を回避することよりも、小さな政治的勝利(オバマ大統領を失脚させることで、国民の人気を得て、党の当選者を増やす)しか考えていない政治家は政治家の資格がないと思います。

その典型的な共和党のスターは日本でも有名なサラ・ペイリンですが、それ以外にも似たようなスターがいます。共和党の下院議員Michele Bachmann(ミシェル・バックマン)がその一人です。でまかせの嘘で民衆を鼓舞することで有名なのですが、その証拠がオバマ大統領の医療制度改革に反対するこのビデオです(Think Progressより)。

医療改革案のモデルのひとつである日本のシステム(政府が管理するユニバーサルヘルスケアシステム)が恐ろしい理由について、彼女はこんな逸話を披露しています。(忙しいので丁寧な訳でないことを前もってお詫びします)

以下はワシントンDCである(名無しの)日本人男性が彼女に接近したというバックマンの逸話です。

彼(その日本人男性)が言うには「日本のヘルスケアでの受診待ちはもうどうしようもない状態だ。(治療を受けたければ、ウエイティングの)リストに乗って、待って、待って、待たなければならない」ということなのです。けれども、みなが知らないのは次の部分だと彼は言うのです。「日本では、国民はヘルスケアについて意見を述べることをやめてしまった。日本のヘルスケアには問題があるのだけれど、それについて発言することを国民は恐れている」私はそこで「それはなぜですか?」と尋ねました。彼は「なぜなら、(ブラック)リストに載って、ヘルスケアが受けられなくなるからだ。保険に加入できなくなり、受診もできなくなる。だから皆恐れている。政府に対して反論するのを恐れている。どんなことを言うのも恐れている」と。私たちはこういう将来を求めているのでしょうか?

He said that in Japan, to wait and get health care is almost
impossible. You get on a list and you wait and you wait and you wait.
But he said this is something people don’t know: in Japan, people have
stopped voicing their opinion on health care. There are things
that are wrong with Japanese health care, but people are afraid of
voicing. ‘Well why is that,’ I asked. [He said], ‘Because they know
that would get on a list and they wouldn’t get health care
.
They wouldn’t get in. They wouldn’t get seen. And so people are afraid.
They’re afraid to speak back to government. They’re afraid to say
anything.’ Is that what we want for our future? 


もちろんバックマンはこの「日本人男性」に会った証拠はまったく提示していません。彼女はオバマ大統領の国籍への疑いを広めたことでも有名な嘘つきですが、日本をまるで旧ソ連みたいに言うのはさらに許せません(と言ったところで、@kana_chika さんから「ソ連は外国人で保険に入ってなくても手術も入院もタダでした。病院内に会計がないので」というTwitterでの体験談をいただきました。私が「旧ソ連」とたとえに出したのは、「政府に反論するとブラックリストに載る」という部分ですが、それもまあ証拠があるわけではありませんねえ) 。

つまりバックマン下院議員が植え付けようとしているのは、「ユニバーサルヘルスケアは社会主義である。社会主義になると政府に文句を言えなくなり、治療が受けられなくなる」という恐怖なのです。

ところで、米国での予約待ちなんて日本からは想像できませんよ。高いお金を払って保険に入っていても、予約しようとしたら何ヶ月も待たされます。だからわが家では風邪やインフルエンザくらいでは病院には行きません。行くのは定期検診だけで、それも6ヶ月くらい前から予約。最近はドクターではなく予約しやすいナース・プラクティショナー(投薬もできる専門家ナース)にしています。

オバマ大統領が相手にしているのは、同性愛結婚に反対で医療制度改革に反対という「反対」が売り物のバックマンやペイリンをスター扱いしている共和党なんです。どうりで近年多くの共和党員が離れて行ったわけです。こんな共和党に対して一生懸命「一緒に働こう」と親切に働きかけてきたくせに、自分の党である民主党(特にリベラル)のアジェンダを無視してきたからオバマ大統領の人気が最近落ちていたのです。彼のことを「これまで最も左寄りの大統領で、意見をちっとも聞いてもらえない」という共和党の言い分は馬鹿げているにもほどがあります。

けれども最近共和党への厳しい態度を示したオバマ大統領の人気が突然上昇しています。ぜひ、スピーチだけではなく議会を力づくで動かすリーダーシップを示して欲しいものです。

オバマ大統領、あなたの忠誠心はどこにあるのですか?

私は昨年の大統領選でオバマ大統領を支持し、勝利を心から祝った者のひとりです。
けれども、最近のオバマ・ホワイトハウスの動向には深く失望しています。
国民にとって、そして世界にとって、もっともプライオリティが高い問題を解決するために、政治的な駆け引きとして(マジョリティの国民にとって)プライオリティが低いもの (たとえば同性愛者の権利拡大)を、対抗する勢力に明け渡すという政治的取引の必然性は、納得できないものの、理解はできます。

けれども、就任後のオバマ大統領は、彼の約束を信じて闘って来た者たちよりも彼を失脚させることだけを目的にしている勢力に媚びているように思えてなりません。

それでも私は「彼が最も重視する医療制度改革を成し遂げるための政治的戦略であろう」と信じようとしてきましたが、上院案に関する一連の対応ですっかり失望しました。
米国の医療制度の抱える問題について私は1997年ごろから数年にわたり医学書院の「訪問介護と看護」でルポを連載してきました。その後もいろいろなところで言及したのですが、あまりにも長くなるのでここでは割愛させていただくとして、一言でまとめると米国の医療制度は崩壊寸前です。大幅な改革をしない限り、私たちの子供たちの世代がまともな医療を受けることは不可能です。

私の夫が企業を離れて独立したとき、幸いなことにマサチューセッツ州なので個人事業者が入ることのできるグループ保険に加入することができました。グループでは最もリスクが少ない(コンサルタント類)ために安いほうだというのですが、当時月額が650ドル(単純に1ドル=100円と計算すると、6万5千円)でした。それが毎年どんどん値上がりし、2010年は月額が1400ドル弱(14万円)になりました。10年間に倍以上の値上げです。
保険費の価格は収入には無関係です。つまり、月給が10万円しかない人でも月額は14万円ということです。たとえ高級とりだったとしても、職を失ってからこれだけの金額を毎月払うことは難しいでしょう。だから、米国の保険未加入者はどんどん増えているのです。

米国の現行の医療保険制度は、メディケア、メディケイド(高齢者、障害者、低所得者などを対象とした公的保険)をのぞき、企業が100%支配しています。Health Reform Watchによると、(わが家が以前加入していた)Aetna保険のCEO Ronald Williams の昨年の年収は $24,300,112(約24億円)です。このところ幸い大病をしていないわが家が支払う保険料の大部分は医師や看護師でなく、こういうところに行っているというわけです。

深刻な問題のひとつは、お金を儲けることが目的の企業では、高い検査や治療を与えないほうが得なので、治療拒否が生まれることです。担当医師が必要だと判断しても、医療の知識がまったくない保険会社が「その治療は必要ない」と拒否することがよくあります。病気の最中に保険会社と闘うことがどれほど身体に良くないか想像していただければおわかりでしょう。
もう一つの問題は、がんや糖尿病などの「preexisting condition(既存の疾病や障害)」があると、保険会社に加入を拒否されることです。また既存の疾病や障害(肥満もそれに入ることがある)があったことが判明すると、治療費の支払いを拒否することもできるのです。

ヒラリー・クリントンが失敗し、ハワード・ディーン(Howard Dean) が支持してきた医療制度は、基本的にカナダ、英国、日本、デンマークなどをお手本にしたユニバーサルヘルスケアシステムです。もちろん、現行のプライベート(企業)のシステムを取り除くことは不可能です。ですから企業のシステムを取り除くのではなく、現行のシステムに公的保険(public option)を導入することが提案されてきました。廉価で加入できるpublic optionを導入することで、企業に値下げを余儀なくさせるという案です。public optionには税金が充てられますから一時的に国民全体の負担は大きくなります。けれども、保険加入者が増えることと競争が生まれることで全体的な医療費は下がる、という考え方です。

多少の相違はあれ、オバマ大統領もこの案を押してきました。ですが共和党から(特に高所得者への税負担が大きくなる)public optionへの反対が強く、「国が生死を決める(death panel)」が含まれるといった奇妙な噂が故意に流され、実現すれば得をする低所得者までが「Tea party」といった過激な雰囲気のある反対運動を繰り広げています。こういったくだらない妨害しかできない現在の共和党は、国民のことをまったく考えない「なんでも反対党」に成り下がってしまったようで、残念でなりません。

2つの戦争と経済危機を引き継ぎ、このような物騒な雰囲気の中で政治改革を進めるのは不可能に近いことでしょう。ですからオバマ大統領の苦悩は想像できます。(就任後、瞬く間に歳を取ったと思います)。けれども、彼はそれを知っていて大統領になった筈です。大統領になった理由は、無益な戦争に終止符を打ち、国民のために医療制度を改革し、温暖化にストップをかけてグリーンビジネスを推進し、企業ではなく国民のための政治をするためではなかったのでしょうか?少なくとも彼を大統領にするために奔走した人々はそう信じています。

最近のオバマ大統領の「言葉」ではなく「行動」だけに注目すると、彼は自分の政治的理念を信じて応援した人々だけを無視しているように思えてなりません。

せっかく下院議長のナンシー・ペローシーが(薄められてしまったが妥協できる)法案の可決にこぎつけたのに、上院では、個人的な理由(コネチカット州には保険会社が多いため)で駄々をこねたコネチカット州選出のジョー・リーバマンの言いなりの案に折れてしまい、それに反対の意見を述べたハワード・ディーンをホワイトハウスが個人的に中傷するような反論をしています。

ハワード・ディーンをよく知らない人は、マスコミのせいで「変人」扱いしているようですが、それはまったくの誤解です。
コロンビア大学卒で医師のディーンは、共和党員として育ったものの民主党に移り、ヴァモント州知事として共和党員とともに数々の改革をなしとげました。その中には医療制度改革や全国にさきがけた同性愛者のシビルユニオン(結婚ではないが、それと同様の法的権利が得られる)などがあります。財政的には古い共和党の信念である「財政保守(fiscal conservative)」です。
ブログやmeetupでの草の根運動やネットを使った20ドルからの政治献金を始めたのもハワード・ディーンです。私は2002年の年末くらいからボストンのmeetupのメンバー(一桁)でした。戦争勃発前から「イラク戦争」には強く反対し、2004年の民主党大統領予備選では、それで他の有力候補から叩かれましたが、今振り返って彼がどれほど正しかったかを認めるメディアがいないのは残念でなりません。

また、民主党全国委員委員長として、これまで民主党が無視してきた南部の「red states(共和党が支配的な州)」にも働きかける「50 state strategy(50州戦略)」を打ち立て、その結果として民主党は議席を大幅に伸ばし、オバマ大統領はred statesでも勝利することができたのでした。当初、この「50州戦略」に反対してディーンと怒鳴り合いをしたのが、現在のオバマ大統領の首席補佐官ラーム・エマニュエル(Rahm Emanuel)でした。真相は分かりませんが、多くの人々の進言にもかかわらずディーンが厚生長官に選ばれなかったのは「エマニュエルがあのときのことを根に持っているからだ」という噂まで流れました。今回の医療保険改革でも、ディーンは「理想案を強行に押し続け、最後の最後にネゴシエーションをする」ことを提案してきましたが、エマニュエルは最初から共和党よりの軟弱プランを押してきました(これまでのいきさつについてはこんな意見も)。

その結果できあがった上院案は、通常の国民にとってはこれまでより税金がかかるだけで利益はほとんどなく、保険会社はさらに利益を得るというとんでもないものです。可決すれば、「可決した」ということが大統領の政治的勝利にはなりますが、彼を支持してきた人々の勝利ではありません。

民主党にとって苦しい状況と分かっていて「この案には賛成できない。否決して新たに始めるべき」とディーンが公言したのは、陰で直接ホワイトハウスに進言してきたのに無視されたための最後の手段なのです。それなのに、「閣僚になれなかったから、ビターなのだ」といったマスコミのコメント(たぶんエマニュエルあたりから来ている)が流れるのには憤慨です。

私がディーンが好きな理由のひとつは「忠誠心」です。私にとっての政治での忠誠心とは、「政治的勝利のために自分の理念を支えてくれた支持者を裏切らないこと」です。2002年から今まで彼の行動を追って来た者たちは、ディーンが自分の信念を頑固に貫くことを知っています。彼らは、ディーンがどれほど真摯にオバマの勝利のために闘ってきたことを知っていますから、今のホワイトハウスの対応には自分自身が裏切られたように感じているのです。ディーンは信念を貫くためには、政治的な「討ち死に」をためらわない潔さがあります。これはずっと変わりません。マスメディアはほとんど触れませんが、ディーンが応援するからオバマを応援してきた者たちが陰でどんどん脱落しています。

ディーンの反対に対する大統領上級顧問デービッド・アクセルロッド(David Axelrod)の「insane(正気ではない)」という反論

http://www.msnbc.msn.com/id/32545640

Visit msnbc.com for breaking news, world news, and news about the economy

それに対するディーンの答え(みよ、この落ち着いた対応を!どこがinsaneなのか)。詳細を聴いていただければ、なぜ彼が反対しているのかご理解いただけるでしょう

http://www.msnbc.msn.com/id/32545640

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オバマ大統領のノーベル平和賞とアフガニスタン戦争

オバマ大統領のノーベル平和賞受賞スピーチを聴きながら、あれこれ思いました。(聞き逃した方はこちらをどうぞ)

ナチスドイツに対して交渉では平和は実現しなかったという「just war(正義の戦争。正当化される戦争)」の観念は理解できます。「平和」を願い、デモするだけでは平和を守ることは不可能です。

けれどもオバマ大統領のアフガン増派の決断は政治的なものだったと思います。もしアフガンから撤退して9/11のような悲劇が起こったら彼が目標にするgreater goodを成し遂げることはできません。私が彼の立場であったら撤退する勇気があったかどうかわかりません。それでも私はアフガニスタンからの撤退が正しい判断だったと思っています。アフガニスタンでの勝利というのはまずあり得ません。またnation buildingも無理です。経済的にも疲弊することがわかっています。そして、もちろん失われる人命が最大の問題です。

オバマ大統領がこのような決断を下さずにはいられなかった背景には、Party politics(党派政治)があります。彼が国のため世界のために実現しようとすることに対して、最近の共和党は、ラッシュ・リンボーサラ・ペイリンのように「オバマ大統領は米国民ではない」、といったデマを鼓舞し、ティー・パーティのような過激なグループ(下記のYouTubeをごらんください)からの支持を歓迎しているところがあります。チェイニー元副大統領のように、日本の天皇に深々と頭を下げたのをここぞとばかりに"What I see in President Obama is somebody who bows before foreign
leaders and spends his trips aboard primarily apologizing for U.S.
behavior. I find that very upsetting."と批判して楽しむばかりで、一緒に米国の経済危機や世界平和のために働こうとしません。オバマ大統領の政策は決して左よりではなく、共感を覚える共和党員もいるはずなのですが、党の勢力に逆らうことは自分の政治生命にかかわるので党のリーダーに従うばかり。David BrooksChristopher HitchensLincoln Chafeeなどの昔ながらのfiscal responsibility(財政責任)を重視する保守派のジャーナリストや政治家たちは「本当の保守ではない」と非難される雰囲気があります。また、もっと深刻な傾向は、保守派に学歴や知識を批判するanti-intellectのムーブメントが広まっていることです。

民主党は共和党よりも党がまとまっていないので、かえって健全なところはあるのですが、それでも古い党のやり口で有能な政治家をつぶしたり、得票力を持っている団体を優先したり。

二大政党があることでバランスをとるのが理想なのですが、それがまったく機能せずに相手を潰すことしか考えていないようです。リンボーが「I hope Obama fails (オバマが失敗してくれればいい)」と過激なことを言っても、人気ラジオ番組の司会者を敵に回してまで批判しようとする保守派がいません。そんな番組ばかり聴く国民たちは、だんだん両極に分裂してゆきます。

オバマ大統領に「アフガン兵力増派」という決断をさせた背景にうんざりする私は、「いっそみんな無所属になってくれないか」と願うわけです。

オバマ大統領の医療制度改革に反対するティー・パーティの雰囲気です

青いバラと生命科学倫理

日経ネットによるとサントリーがついに青いバラの発売を始めるそうですね。
この記事を読んで、2001年に最相葉月さんが出版された「青いバラ」を思い出しました。

http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&npa=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yukariscott-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=4101482217

この中に遺伝子組み換えにより青いバラを作り出そうとするサントリーの試みも登場します。興味深いのは最相さんがこの後で「受精卵は人か否か」という生命科学技術に関するサイトを開設されたことです。
下記は最相さんによるサイトの説明です(サイトHPより抜粋)。

みなさまがご自身の意見を持つ前提として参考にしていただけるような情報をできるだけ公平な視点で交通整理し、提供しま
す。生命科学技術はクローン人間や不妊治療、ヒトゲノムや遺伝子診断、再生医療等々、連日のようにメディアをにぎわせていますが、その内容や社会的意義を
理解するにはあまりにも高度な専門知識が必要です。


 私はクローン羊ドリーの誕生以降、この分野の動向を追い続けてきましたが、最も痛感したのがそのわかりにくさでした。でも、こうした技術は本来、私たち
の未来の生活を左右する、大変身近なものであるはずです。それなのにいったい何が今起こっていて何が問題なのかもわからないというのではそれこそ大問題で
す。専門家は何を考え、国の方針はどうなのか、海外ではどうなっているのか、もっと視点を身近にひきよせて、ではあなたはどう考えるのか。


 何かと早急に答えを求められることの多い生命科学技術ですが、あなたがあなた自身の考えを深めるための補助的役割を果たせれば幸いです。

私は2002年にクローンなどの生殖医療に疑問を覚えて「神たちの誤算」という小説を書きました。そして、その年からしばらくの間上記のサイトに寄稿するサポーターを務めさせていただき、最相さんだけでなく他のサポーターの方々とも生命科学倫理について意見を交わす機会に恵まれました。そのとき感じたのは、たったこれだけの人数でも意見が一致することがないという事実です。それなのに、現実社会ではきちんとした対話なしにどんどん技術だけが先に進んでいるのです。

「バラくらいいいじゃないか」と思われるかもしれません。
でも、Margaret Atwoodのディストピア小説「Oryx and Crake」やその続編「The Year of the Flood」をお読みになると、遺伝子組み換えの恐ろしさを感じるかもしれません(これらの小説は近日中に洋書ファンクラブのほうでご紹介する予定です)。

オバマ大統領、ノーベル平和賞受賞!

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2009年のノーベル平和賞の受賞者はオバマ大統領と決まりました!
(左はMSNBCのニュース速報
その理由は、"his extraordinary efforts to strengthen international diplomacy and cooperation between peoples."というものです。
差別や敵意むき出しの過激な保守派の政治家やトークショーホストなどに対してもdiplomaticな姿勢を崩さないだけで十分「平和賞」に値すると私も思います。

冗談はさておき、「実績がないのになぜ?」と納得できない方もいらっしゃるでしょう。欧州は、当然のことですが、ブッシュ大統領と当時の米国が象徴する外交姿勢を非常に懸念しています。ですから、武力ではなく外交を重視するオバマ大統領の信念と彼を選んだ米国民を評価した「平和賞」なのだと私は思っています。「米国よ、ブッシュ時代には戻らないでくれ」という願いが込められているかもしれません。

でも、これでまた黒人が大統領として自分の上に立つのが許せない米国民や保守派からの攻撃は激しくなるでしょう。
人間の性とは悲しいものです。だから平和はいつまでたっても実現しないのです

追記:

私が予想したとおり、米国内ではネガティブな反応のほうが多いようです。

上記のエントリーの後、NBC の"Morning Joe"という政治番組を見ていました。

Mika Brzezinski が最初に「The upside is the European community is embracing this president and saying we like the direction that he is taking this country in and it’s drastically different," suggested」と私と同様の意見を述べたのですが、結局最後には他の司会者や出演者と同様に「The damage is done.」とオバマ大統領にとって百害あって一利なしという結論に達しました。(私はJoe Scarboroughが好きではないのですが、この意見はそう外れていません)。

そのビデオはここからもご覧になれます。

たぶんオバマ大統領は個人としては賞を受け取らないだろう、というのが多くの人の予想です。

追記:これがオバマ大統領の受賞スピーチです。

オバマ大統領が今日サポーターたちに送ったEmailの内容:

Friend —

This
morning, Michelle and I awoke to some surprising and humbling news. At
6 a.m., we received word that I’d been awarded the Nobel Peace Prize
for 2009.

To be honest, I do not feel that I deserve to be in the company of so
many of the transformative figures who’ve been honored by this prize —
men and women who’ve inspired me and inspired the entire world through
their courageous pursuit of peace.

But I also know that throughout history the Nobel Peace Prize has not
just been used to honor specific achievement; it’s also been used as a
means to give momentum to a set of causes.

That is why I’ve said that I will accept this award as a call to
action, a call for all nations and all peoples to confront the common
challenges of the 21st century. These challenges won’t all be met
during my presidency, or even my lifetime. But I know these challenges
can be met so long as it’s recognized that they will not be met by one
person or one nation alone.

This award — and the call to action that comes with it — does not
belong simply to me or my administration; it belongs to all people
around the world who have fought for justice and for peace. And most of
all, it belongs to you, the men and women of America, who have dared to
hope and have worked so hard to make our world a little better.

So today we humbly recommit to the important work that we’ve begun
together. I’m grateful that you’ve stood with me thus far, and I’m
honored to continue our vital work in the years to come.

   
Thank you,

   
President Barack Obama

オバマ大統領の医療制度改革に対する反発は、羊の皮をかぶった「人種差別」である

世界で最大の医療費を費やしながらも無保険者の割合は先進国で最大。毎年値上がりする医療保険は、個人事業のわが家では月額12万円程度になっています。これでは年収が1千万円を超える中流階級でもいったん職を失うと無保険にならざるを得ません。この状態で深刻な疾病に罹患したら、財産をすべて失い、ホームレスにもなりかねません。

徹底的に崩壊した医療保険制度ですが、この改革に手を出した政治家はすべて致命的な火傷をするとみなされています。有名な例がクリントン大統領夫妻です。当選したばかりのクリントン大統領が妻のヒラリーを起用して試みた医療制度改革は、共和党右派の激しい攻撃に合ってついに断念せざるを得なくなりました。国民は共和党のダーティな戦略に洗脳され、次の総選挙で民主党は多くの議席を失いました。

この危険な医療制度改革をオバマ大統領が再び試みています。
政治的には不利でも、国民のために行わねばならない、という使命感からです。
勇気ある行為ですが、ふたたび共和党右派はこれをつぶしにかかっています。

もっと不安なのは、クリントン時代よりも激しい怒りを噴出しているTea Partyデモ(米国の独立戦争勃発寸前、サミュエル・アダムスが率いるグループが英国の植民地政策に反対して紅茶をボストンの港に放り込んだBoston Tea Party事件から名前を借りている)です。

これを観ていて、私は娘にこう言いました。

「オバマの『社会主義』に反対する彼らの意見は表層的な言い訳であって、実は人種差別を根底にした白人の不満の噴出にすぎない。本来であれば彼らの奴隷にすぎない黒人のオバマが大統領として自分たちの上に立つことがどうしても受け入れられないのだ。たとえ本人が認識していないとしても、それは厳しく自問していないから。社会主義を恐れている人がいるとしたら、それは白人優先主義のプロパガンダに洗脳されただけ」

すると昨日のニュースでカーター大統領が私と同じようなことを言ってくれました。そう思っていてもなかなか言えないのがクリントン大統領の立場(ヒラリーが現役の国務長官ですから)、それをはっきりと言ってくれたカーター大統領には拍手喝采です。カーター大統領は「極左」だと軽く無視される傾向があるので、効果は期待できませんが…それでも誰かがはっきり口にするべきことです。

追記:

この現象はなにも黒人への差別に限ったことではありません。

このTea Partyに参加しているのは、基本的に「アングロサクソンは生まれつき他の人種よりも優れている」という信念以外には誇りにできるアイデンティティがない人々です。彼らは、社会経済的に優位な地位をしめていたマイノリティのユダヤ系に支配されることを恐れたドイツの白人(ゲルマン/アーリア人)たちであり、80年代に日本がアメリカ経済を侵略することを本気で恐れて日本製の車を破壊したアメリカ人たちなのです。彼らが今恐れているのは、「オバマがもたらす社会主義」ではなく、オバマ大統領が率いる黒人たちが白人の彼らを支配する世界の到来なのです。

彼らの被害妄想はホントの本気です。だからよけいに「馬鹿な奴らだ」で済ませられないと思います。

ところで、ホワイトハウスは「人種差別」を否定していますが、これはごく当然の対応です。これを訴えると重要な医療制度改革から横道にそれてしまいますし、被害者意識をあらわにすると彼を支持している白人まで敵に回すことになります(ハーバード大学のゲイツ教授の事件でも明らか)。つまり政治的に百害あって一利無しなので「人種差別カード」は使わないようにしているのです。それゆえカーター大統領の発言を非難する声は民主党サイドからも聞こえてきます。でも、私はあえてカーター大統領の率直さをたたえます。

住んでいる町がどう運営されているかを知ろう

民主主義についてこれまで何度か書いたことがありますが、日本に住んでいたころ私自身が誤解していた民主主義はけっこう「政府まかせ」でした。税金さえ払っていたら国民(市民)としての役割は果たしており、うまく行かないときにはぶつくさ愚痴を言うしかないというものでした。

アメリカのマサチューセッツ州レキシントン町に移り住み、民主主義が遂行されるためには、国民(市民)が知識を得て口も手も出さねばならないのだということを学びました。野次馬のままではいけないのですね。

私は永住権(通称グリーンカード)を持っていますが国籍は日本です。従って選挙権はありません(国の方針を決めるのは国民のみの権利ですので、私はこれに異論はありません。例えば「徴兵制度」ができたとしたら国民には遂行の義務があります。そんな制度を決める代議士を選ぶ権利を「徴兵」義務のない国民以外に与えるのは論理的ではありません)。

ですが、この町の良いところは、投票権がないからといって私のような移民の声を無視しないことです。それどころか「私たちには見えない盲点を突く発言をしてほしい」とかえって貴重な存在として扱っていただき、移民の声を地方政治に反映しようと努力してくれることです。町の将来のために行政委員(選挙で選ばれた町民ボランティア)に政策をアドバイスする2020 Vision Committeeというのがあり、私は7年ほど前からその下部委員会のいくつかに誘われて参加してきました。

私が提案したことのいくつかが実現したときに、これほど喜びを感じたことはありません。

これまでいくつかの会議で繰り返し語られたのが「町民が行政に対して不信感を抱く背景には、未知のものにたいする猜疑心がある」という見解です。知人の香港からの移民が「教育委員は自分の得になるから選挙に出る。そうでなければあんな仕事は引き受けない」といったわけのわからない確信を抱いているのがよい例でしょう。
そこで何度か、「そういう人々に町がどのように運営されているのかをわかってもらう方法」が話し合われてきました。

その新たなる試みがこれ、Lexington Citizen’s Academyです。

Lexington_citizens_academy

町がどう運営されているかを知るだけでなく、町を運営する人々と直接語り合うと町の一部になった実感もわいてきますし、信頼感も生まれます。Lexingtonの町民でしたら、全コースに参加できなくてもぜひご参加ください。
参加料はタダですが、登録の必要があります。
電話でOKです。

コンタクト:Brianna Olson (Town Manager’s Office)電話番号: 781-862-0500 x209 または bolson@ci.lexington.ma.us

期間:2009年9月22日から11月16日。最終日(火)をのぞき毎週月曜日午後7時〜9時

レキシントン町に関する記事バトルグリーンをこちらに(途中まで)載せていますので、ご興味ある方はお読みください。

また、教育に関する記事はこちらをどうぞ。これも書きかけですcoldsweats01

米国初のヒスパニック系連邦最高裁判事誕生!

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米国上院での投票の結果、68対31でソニア・ソトマイヨール連邦最高裁判事の就任が決定しました。米国で初めてのヒスパニック系でしかも女性の連邦最高裁判事の誕生となります。
共和党で賛成票を投じたのは9人のみ。二党間の隔たりを感じます。

ニューヨークタイムズ紙の記事はこちら。

ハーバード大学のGates教授逮捕事件のベストな解決策

ハーバード大学のHenry Gates教授が中国からの旅行から帰宅したとき、自宅でケンブリッジ警察の警官に逮捕されたのは先週のこと。それが国際的な話題になったのは今週になってからのことでした。
黒人のGates教授が家に戻ると玄関のドアが壊れていて中に入れず、無理に入ろうとしているのを目撃した白人女性がケンブリッジ警察に通報し、パトロール中の警官(ボストンの警官の典型でアイルランド系の白人)が駆けつけたところすでにGates教授は自宅の中に入っていました。
ここからが警官の言い分とGates教授の証言が異なるところで、警官がGates教授にIDを求めたところ、Gates教授はそれを拒絶し、自宅にいる黒人がこういう扱いを受けるのは人種差別だといった意味のことを言って怒鳴り始めたというのが警官の言い分です。Gates教授の言い分はIDを見せたにも関わらず警官が自宅の外に出るように命じ、教授のリクエストにもかかわらず警官の証拠であるバッジを見せなかったとのこと。
Gates教授が警官に向かって怒鳴っていたことと、身体的な接触がなかったのは双方が認めていることですが、警官に対するdisorderly conduct(この場合、怒鳴ったり、ののしったりしたこと)でGates教授は手錠をかけられて逮捕されたというわけです。

その場にいたわけではありませんが、警官の書いたレポートもちゃんと読んだ結果、私が想像するのはこういったシナリオです。

黒人の男性はいろいろ差別体験を持っています。ふだんはなるべく過剰反応をしないようにしている人でも、疲れているときなどにはカッとくることがあると思うのです。たぶんGates教授は長旅で疲れているときに自分の家の中にいるのにもかかわらず身分証明を求められて「この尊敬される地位に達してもまだこんな差別をされるのか!」と頭に来て、過度に「私を誰だと思っているのか?」という横柄な態度に出たのでしょう。そして、警官のほうも、頭越しに怒鳴られたもので、「教授だからといって警官の私より偉いと思ったらおおまちがい。どっちが偉いか見せてやろうじゃないか」と意固地になったところがあるのでしょう。教授だとわかった時点で「それは申し訳なかった。仕事だから勘弁してほしい」と丁寧に謝罪すれば、教授もだんだん落ち着いたと思うのです。それに、どんなに怒鳴っていても自宅にいる者でしかも身体に触れていない市民を逮捕するってのは行き過ぎだと私は思います。

要するに、どっちもどっち的ですが、誰にでも起こりえることです。

その後起訴は取り下げられたのですが、この問題が全国的に話題になり、Obama大統領がヘルスケア改革演説の後に意見を求められたのが泥沼化の原因になりました。Gatesを逮捕した警官が"acted stupidly"と言っちゃったのですよね(ABCニュースのビデオ)。これを聴いたとたん、私は「これはまずいことになったぞ」と思いました。

案の定、共和党はここぞとばかりに白人層の怒りをかき立て巻き返しを狙いはじめました。リベラルで知られるボストン界隈ですが、地元のテレビニュースや新聞では、ケンブリッジの警察を支持する意見が圧倒的で、ケンブリッジ警察は記者会見までしてGates逮捕を正当化する意見を強調しました。

ですが、さすがにスマートなObama大統領です。
さっそく、この白人の警官に電話し、Gates教授と3人で一緒にビールを飲んで話し合おうじゃないか、と提案したというのです。話し合えばわかる、ってことがよくあるのですよね。これを機会にGates教授とケンブリッジ警察が仲良くなってくれるとうれしいです。