南極旅行記その4「ペンギンと屋外キャンプ」

自然に触れるのは好きですが、テントで屋外キャンプするのは苦手な私です。ですが、こういう機会は二度とないと思ったので、南極で屋外キャンプというのを体験してきました。

チョイスは、2人用のテントかビビーサック(bivouac sackのことで、Bivvy, Bivy, Bivi Sackなどと呼ばれる)。バックパッカーやハイカー、山登りによく使われる超軽量の防水性と断熱性があるマミー型のシェルターで、寝袋の外側に使います。キャンプのリーダーに強くBivvyを薦められたので、こちらを選びました。

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私たちのBivvy Sack。朝には表面に霜ができていました。

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南極旅行記その3「胸躍る出会い」

アメリカのディスカバリーチャンネルと日本のNHKが共同制作で関わったイギリスBBC自然ドキュメンタリーシリーズの『プラネットアース』(Planet Earth)のことをご存知の方は多いと思います。

Quark Expeditionの南極旅行では、忙しいアクティビティの合間を縫って歴史家、生物学者、地質学者などの専門家のレクチャーがありますが、そのひとつに行って私は小躍りしました。

なんと、『プラネットアース』だけでなく、『ブルー・プラネット(The Blue Planet)』やディズニーのドキュメンタリー映画『アース(Earth)』の製作にアソシエイト・プロデューサー、カメラマンとして深く関わったSue Floodさんだったのです!

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南極旅行記その1「ペンギン!」

Quark ExpeditionsのOcean Diamond船で南極旅行に行ってきました。

ガラパゴス諸島にはNational Geographicで行き、それも最高に楽しかったのですが、National Geographicより知名度が低いQuark Expeditonsのほうが部屋、食事、サービス、アクティビティ、レクチャーすべてにおいて満足度が高かったです。唯一困ったのはネットが繋がらないことで、夫と私は200ドル分のネット接続を購入したのに全然繋がりませんでした。最初から「繋がりません」と言ってくれていたら諦めがついてよかったのにと思いました。

最初のご報告は、ペンギンです。

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ブエノスアイレスで人気上昇中の「アンダーグラウンドレストラン」体験

夫と旅行するとき、レストランを見つけて予約するのは私の役割です。私のほうが食べたいものがはっきりしていて、しかもうるさいからです。スウェーデンやポーランドでもそうでした。

ブエノスアイレスで私が選んだiLatinaは、ブエノスアイレスで人気上昇中の「アンダーグラウンド・レストラン」のひとつです。アンダーグラウンドレストランにはいろいろな種類があり、いろいろな呼び方があるようですが、いずれも表にレストランの看板がなく、全予約制で、少人数対象です。ふつうの家を使っているところも多く、見知らぬ人と一緒に大きなテーブルで一緒に食事、というタイプも多いようです。

iLatinaのシェフSantiago Macíasさんはコロンビア出身。レストランの場所はアルゼンチンですが、コロンビアの伝統的な料理をモダンにしたものが主流です。素晴らしいという噂は聞いていたのですが、体験は期待以上でした。

 

8コースなのですが、このコースが始まる前に前菜が出てきます。

ハッシュあるいはパンケーキのようなコロンビアのarepasとアニスとトマト味のソースhogao

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最も手っ取り早い自分への投資は読書である『野蛮人の読書術』

アメリカ在住の私が元参議院議員の田村耕太郎さんの存在を知ったのはツイッター上のことだった(ツイッターではよく「タムコーさん」と呼ばれている)。

私はブログ「洋書ファンクラブ」で洋書を紹介しているし(今年は『ジャンル別 洋書ベスト500』という本も上梓したし)毎日ジョギングやクロストレーニングは欠かさない。トレッドミルで走りながら読書をするために初代キンドルを購入したくらいの人だ。だから、『世界のエリートはなぜ歩きながら本を読むのか?
』という本を書き、若者たちに「英語を勉強しよう!」、「世界に出てゆこう!」、「身体を鍛え、読書をしよう!」とツイッターで呼びかける田村さんに共感を覚えた。ツイッター友達に紹介していただいたところ、想像以上に気さくでポジティブな方だった。

 

その田村さんが 『野蛮人の読書術』という読書に関する新刊を上梓された(情報公開:私も47ページでちょっと紹介していただいている)。

田村さんは、「はじめに」の冒頭にこう書いておられる。

私が伝えたいメッセージは、「読書こそが、激動の現代を"自由に生き抜く術”を身につけるための、最良にして最短の道である」というものだ。

以前、ご紹介した佐々木俊尚さんの『レイヤー化する世界』にも書かれていたが、「ハイパーコネクティッド化(田村さんの表現)」し、「レイヤー化(佐々木さんの表現)」したこれからの世界は、今までの私たちが馴染んだものとは異なるものになる。しかも、変化のスピードは加速している。

私と同年代かそれ以上の年寄りは「日本はガラパゴスでいい」と頑固に抵抗していても損はしないかもしれないが、これから何十年も生きなければならない若者はそういうわけにはゆかない。ひとりひとりが、世界と複雑に繋がった日本で「生き抜く術」を考えなければならないのである。

田村さんや佐々木さんにこの「危機感」が見えるのは、海外に飛び出して現状を見ているだけではない。読書で知識を蓄積しているからである。同じものを見ていても、知識があるのとないのとでは、見えるものが異なるのである。

田村さんも本書で指摘しておられるが、アメリカの優良大学(アイビーリークという意味ではない。ランキングも使うデータで結果が異なるのでそのまま信じないほうがいいが、リベラルアーツ大学のランキングも同様に、トップ100程度は優良大学とみなしていただきたい)では、相当量の本を読まねばならない。本書にも登場する寺田悠馬さんが卒業したコロンビア大学(この場合、Columbia UniversityのうちColumbia Collegeだけを指す)では、「コアカリキュラム」というものがあり、専攻にかかわらず全員がContemporary Civilization,
Literature, Humanities,
University Writing,
Art Humanities,
Music Humanities,
Frontiers of Science
を勉強しなければならないのである。つまり、物理学を専攻する者も現代文明、文学、音楽、アートを学ばねばならず、文学を専攻する者も基本的な科学を学ばねばならない。

コロンビア大学は、その目的を次のように説明している。

The habits of mind developed in the Core cultivate a critical and
creative intellectual capacity that students employ long after college,
in the pursuit and the fulfillment of meaningful lives.(コアカリキュラムによって培われた知の習慣は、学生が、有意義な人生を追求し、実現するために卒業後も長期にわたって活用できるクリティカルかつ創造的な知的能力を培う。)

私の娘がコロンビア大学を選んだ理由のひとつが、「クリティカルかつ創造的な知的能力を培う」コア・カリキュラムだった。

そのコア・カリキュラムの重要な部分が読書である。合格した者がプレゼントとして受け取るのは『Iliad(ホメロスのイリアス)』で、20世紀初頭からすべてのコロンビア大学生が読んできた本のひとつだ。そのほか、本書で寺田さんが語るように、プラトンの『国家』、フロイトの『文明への不満』、ウルフの『灯台へ』などを読み、ディスカッションしなければならない。

ふだん自分では選ばない類の本を短期間で集中して読み、ディスカッションし、エッセイを書くことで、これまでになかった能力が身につく。特にアメリカでは、どの専門職でも大量の書物や書類を読まねばならず、論文を書いたり、プレゼンテーションや講演をしなければならない。短期間で読書し、内容を把握し、アウトプットする知的訓練を大学時代にすることで、卒業後の仕事の内容やスピードに差が出てくるのは当然のことだろう。人生の楽しみ方にも差が出てくる他の人が「辛い」と思う作業が「興味深い」、「楽しい」に変わるからである。

私は娘からコア・カリキュラムの素晴らしさを何度も聞かされ、「私もそういう大学に行ってみたかった」と羨ましく思った。私は親の反対にあい、自分で働いてお金を貯めてイギリスに語学留学し、それで「勘当だ」と言われた人なのだ。知の習慣をつけるために留学させてもらえるような恵まれた子供時代は送っていない。だが、若い頃に機会がなかったことを嘆いても仕方がない。親から機会を与えてもらえなかったなら、自分で自分に機会を与えてやればいいのだ。

それが「読書」である。

特に英語での読書をおすすめする理由は、1)日本語に訳されていない本を読める、2)出版されたときに世界の人々と同時に読める、3)海外の人々と本を通じて繋がることができる、4)世界で何が起こっているのかを把握することができる、5)他人の受け売りではなく、自分で結論を導き出して戦略を立てることができる、からである。

 

田村耕太郎さんのひたすら前向きな発言は、「グローバル」とか「エリート」というバズワードと重なったときに、シニカルなインテリ層の苦笑を買うことがある。私は「エリート」とは無関係の経歴だし、ときおりアンチ・エリート的な発言もする。「グローバル人材」という表現も誤解を呼ぶのでなるべく避けたいと思っている。だが、田村さんがバズワードを使って若者に伝えようとしていることには大いに賛同するし、彼の底なしのポジティブさも尊敬している。揶揄や中傷は無視するが、正当な異論や批判には耳を傾け、意見を修正する彼の柔軟さに気づいているからだ。こういう「ナチュラルに朗らか」の背後には、必ずといっていいほど他人には見えない決意と努力がある。私が田村さんを根本的に尊敬するのはそういう部分である。

閉塞感、羨望、劣等感でシニカルな態度を取っていても、人生は良くならない。不満や不平を抱いている暇があったら、外に出て真剣勝負してみたほうがいい。ワクワクするだけでなく、怖い思いもするだろうが、それでもずっと面白い人生を生きることはできる。少なくとも、死ぬときに「やりたいことをやっておけばよかった」と後悔することだけはない。

周囲の大人や大学が教えてくれない部分は、読書で得ようではないか。

田村さんは自分のことを「野蛮人」と謙遜しておられるが、野蛮人でも、私のような田舎者でも、読書によって同じ情報を得ることができる。ネットでの映像を使った教育が注目されているが、それだけではダメだ。多少苦労して本を読まねば、自分でエッセンスを把握する能力は鍛えられない。

田村さんの『野蛮人の読書術』には、いろいろな読書家が登場するが、彼らの読書術とおすすめの本も刺激になる。他人より多くの本を読んでいることを自負している私でも、他の読書家のアプローチは参考になったし、「ああ、これも読まねば」と思う本がいくつもあった。

何よりも「読もう」、「読まねば」という動機を与えてくれるのが好ましい良書である。高校生、大学生への贈り物にもおすすめ。

「海外で売りたい」「売れないのはなぜ?」を本音トークしてみたらどうだろう?

カナダのニューブランズウィック州セント・ジョン市商工会議所(Chambers of Commerce)が、地域のビジネスを活性化させる新しいマーケティングを学ぶセミナーを実施した。

ここで2日にわたって講演とセミナーをした夫David Meerman Scottの補佐役として私も参加させていただいた。

ニューブランズウィック博物館でのレセプションで、鯨の骨に取り囲まれて、商工会議所の人やカナダ人ビジネスマンたちとざっくばらんなビジネストークをしたのだが、こういう場で聞く本音がいつも面白い。

 

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right whale(セミクジラ)の骨の前で

 

 

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「危険」を怖れるのではなく、「危険」を計算して行動すべきだ

海外を旅行中の日本人が襲われるたびに、その地の危険さを強調する意見や、そんな場所に行った被害者の「安易な判断」への批判がネットにあふれる。

「アメリカは銃で撃たれるから危険だ」と信じている人もいる。

それらの過剰な反応を目にするたびに「では日本にいれば犯罪にあわないのか?」と尋ねたくなる。「通り魔」という単語があるくらいだから、歩いているときにいきなり刃物で刺されたりする事件はあるのだ。

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子どもが心理的な暴力を受けない権利を無視しないでほしい。

オリジナルの投稿をしてから、賛否含めた多くの反応があり、語り合ったうえで、考えを整理し、次のように書き直しました。オリジナルが読みたい方は、こちらに保存してありますのでどうぞ。

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肉体的なことに関して、たとえば大学のスポーツ部でよくある「シゴキ」に近い特訓を9歳児に与えたとし、「9歳にはキツすぎたかもしれない。けれども、それを乗り越えられたのだから役に立ったのだ。だから、すべての小学生からその機会を奪う大人は間違っている。与えるべきではないか」と主張したら「何を言っているのだ?」と叩かれるだろう。

少なくとも、疑問に思う人のほうが多い筈だ。
その子によっては、乗り越えて逞しくなる機会かもしれないが、成長に合わない特訓は、身体を壊してしまう。つまり肉体的なトラウマになる。

だが、肉体的なことではなく、情緒や心理に大きな影響を与えるビジュアルや文章の情報については、日本人は非常に無頓着だと思う。

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じぶんにあんまり興味がない…ということ。

大学の夏休みのほとんどをニューヨーク市で過ごした娘が、充実したインターンシップを終えて、夏休みの残りちょっとを過ごすために家に戻ってきた。

最初の夜は、私と夫のガラパゴス旅行の報告会と娘が夏の間に書いた医学論文(ケーススタディ)のパワーポイントプレゼンテーションであった。このケーススタディがことのほか面白くて、20分の筈だったのに1時間以上話し込んでしまっていつものように4時起床の今朝は寝不足。

昼食のときにまたあれこれ話し合っていたのだけれど、そのとき質問されて若い頃の自分のことを思い出してみた。

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